氷姫 弍【冨岡義勇】

漆拾陸話 ページ28

…Aは本当に泣くと眠るらしい。


沢山泣いて、抱き締めていたが急に静かになり見てみたら目を瞑り寝息をたてていた。


…こんな所で寝かせるのもあれなのでAを背負って屋敷に向かう。
こうやってAを背負い屋敷に帰るのは何回目だろうか。…嫌では無い。





＿＿Aが泣くのは何回もあったが、あんなに叫びながら泣いていたのはあの時以来かもしれない






＿＿＿あれは3年前。



たまたま、非番で夜にしっかりと睡眠をとっていた時だ。


戸を叩かれ、出てみればAが居た。当時の俺はAの存在は知っていたが話したりした事は無かった




『…水柱様………』



その時のAは怪我をしていて、目には涙を浮かべていた。



「……お前は…胡蝶の妹か」



花柱の胡蝶カナエの妹として知っていた。
…剣技の実力も中々のものて聞いていた



『………ｯ………すみませ…ん』



Aは急に泣き出してしまった。…急に泣かれては何をしたら良いのか分からない。



＿＿「カァ！カァ！花柱 胡蝶カナエ死亡！上弦ノ弍トノ格闘ノ末死亡！！」



その時に鴉が胡蝶の訃報を伝えてきた。…その時に分かった。姉が死んで泣いていたのか………



『……わ…たしが…死ねば…良かったｯ……』




そんな言葉を聞いて、昔の俺と重なった＿＿
姉が死んで悲しみにくれていた時。
自分が死ねば良かった。と言っていた自分に…



「＿＿＿辛かったな…」


としか声をかけられなかった。
…次の瞬間、驚きの言葉をAは発した。



『私を継子にして下さい』



その時のAの表情は真剣な顔をしていた
瞳に迷いは無いように見えた。





＿＿＿そして今まで3年間1つ屋根の下で暮らしてきた。





『…しは…ん』


背中から俺を呼ぶ声がした。…寝言だろう。
だが、そうやって寝言で俺を呼ぶだけでも俺は嬉しくなる。






＿＿＿A、お前は死ぬべき者じゃないぞ

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