4話 ページ5
Noside
男はずっと素振りをしていた。
ずっと素振りをしていて疲れたのか
A『兄さん、少し休憩にしたらどうですか?』
懐かしく心を苦しませる少女の声が聞こえた。
ばっと振り向いても、そこには何も誰も居ない。
実弥「…テメェ、どこに居やがる。」
ずっと探している少女は
ふとした時にこうやって懐かしい声を耳に残しやがる。
実弥「……チビ、さっさと来い。説教してやる。」
生きてると信じ、
また剣の素振りを始める。
いつか必ず見つけて抱きしめたい。
母と瓜二つの小さな1番近い妹は、
父親に歯向かう事もなければ小さな身体で弟妹を守る優しい人だった。
母同様小さくも逞しかった。
実弥「……」
頸を噛まれた妹は、その場で振り払って入れば助かったかもしれない。
しかし、弟妹を守る為に必要最低限の抵抗しかしなかった。
実弥「…A…」
万が一、生きてて鬼になっていたら…
実弥「……」
考えるのをやめて、稽古に勤しむ事にした。
ガタイが雄々しく成長した男は
悲鳴嶼「修業に勤しむ…良い事だ。」
岩柱の稽古をしていた。
A『玄弥。』
ばっと顔を上げてもまだ青い果てなき空が続いているだけだった。
玄弥「……姉貴…」
A『玄弥、頑張ってるんだね。』
記憶の中に居る姉は常に笑っていた。
優しい笑みと穏やかな声で弟妹を守っていた。
父親が刺されて死んだ時、
姉だけは父の為に線香をあげていた。
どんな人間だろうと、人間ならばと対等に接していた姉は
急に姿を消してしまった。
弟達の亡骸は母が傷つけた以外の傷はなく、
混乱してたのも相まって姉が死んだと思い込んでいる。
玄弥「…姉ちゃん…俺、兄貴に認めてもらえるように頑張る。」
A『玄弥、無理だけはしないでね。』
記憶にある限りの優しい声に心地良さを覚えて目を閉じる。
優しくも強かった母と姉。
父親から自分達を守っていて、
なお、生活出来るようにずっと寝ないで働いていた母と
母の重荷を支えるかのように家事を全て完璧にこなしていた姉。
玄弥「……」
弟妹と母は既に埋葬して、岩柱に引き取られて「呼吸」が使えないから継子にせずとも面倒を見てくれている人がいる。
玄弥「…姉ちゃん。」
姉が1番よく使っていた古い櫛と髪留め。
玄弥「また修業してくる。」
形見として、仏壇として、姉に話しかけて部屋を後にする。
A『行ってらっしゃい、玄弥。気をつけてね。』
弟は家族の仇を打つ為に今日も修業する。
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作者名:ペテン師 | 作成日時:2019年11月20日 4時