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「どうですか、大学は」
「まぁ…普通」
「ちゃんと友達できました?」
「少し…うん。できた」
「ふふ、じゃあ彼氏とかは」
「それは…は?」
手が止まる。今なんて言った?
「彼氏」
「はい」
「いない…けど」
「よか…そうなんですね」
何か言いかけたみたいだが触れないでおく。それより、こんな乙女チックな話題を出すヤツだったか。刀也は。
「彼氏はいないけど気になってる人ならいるよ」
自然と口から出てしまった。この際、もうどうでも良かった。久しぶりに好きな人に会えて、こんな近くで話していること自体が、夢のようだったから。
「…は」
そうしたら刀也の手も止まっていて。稀に見る間抜け面で、思わず吹き出してしまった。
「なんで笑うんだよ」
「ごめんごめん。顔が面白くて」
「はぁ…で、どんな人なんですか」
なんだコイツ。息を吐くように恋バナを展開させてくる。どうしたいんだ。何を企んでいるんだ。
どんな人、なんていざ考えるとすぐには出てこない。かと言って君だよ、なんて言える勇気など私は持ち合わせていない。
「うーん、面白い人」
「他には?」
「え?…頭が良くて、運動もできて…」
「…」
「ふとした時に優しくて、周りがよくみえてて、」
「すごく好きなんですね、その人のこと」
その言葉にハッとして口を噤む。私としたことが。恥ずかしい。顔が熱くなるのがわかった。
「好き、だよ」
「っ…」
なんで刀也がそんな辛い顔をするのだろうか。私の調子が狂うからやめてほしい。ていうか、ここまで言って自分のことだって気がつかないのか。
「高校の時から好きなの」
「そう、なんですね。あ、僕そろそろ帰ります。実家にも顔出したいし」
「あ、うん…」
結局また何も言えなかった。少しの勇気も虚しく、もうお別れの時間だ。立ち上がった刀也のポケットから、何かが落ちた。
「あ、落としたよ」
拾い上げる。
「あ、それ、」
「?」
慌てる刀也。"それ"に目を落とす私。
往復切符だ。期限は今日。
しかも後数時間。
「…え」
思わず刀也の顔を見る。刀也は顔を背けていた。
耳が真っ赤だ。
「…実家顔出してる時間、ないんじゃない」
「…」
「耳、赤いよ」
「…うるさい」
お互い顔は真っ赤だろう。
「私の好きな人、」
もう、どうにでもなれ。
「刀也だよ」
「えっ…」
お兄ちゃん、まだ少し帰ってこなくて良いからね。
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ごま油(プロフ) - 椰子の木さん» ありがとうございます!!!😭🙇♀️💕ただいま続編制作中なので、公開されたらそちらもぜひお楽しみください!🥰 (2022年2月6日 15時) (レス) id: 15b2d79f8c (このIDを非表示/違反報告)
椰子の木 - でぇ"でぇ"でず!!!!!素敵なお話をありがとうございます!!!!! (2022年2月6日 13時) (レス) id: 11f8b9c583 (このIDを非表示/違反報告)
ごま油(プロフ) - ぱんださん» わ〜ありがとうございます😭😭これからもどんどん口角上昇で天井破壊できるようなお話お届けできるよう頑張ります!!!💪❤️🔥 (2022年1月31日 16時) (レス) id: 15b2d79f8c (このIDを非表示/違反報告)
ぱんだ - なっとうてぇてぇお話大好物です。口角が天井壊しましたわ。ありがとうございます。 (2022年1月31日 16時) (レス) @page41 id: aea4cabad8 (このIDを非表示/違反報告)
ごま油(プロフ) - どんどんぐりさん» ありがとうございます🙇♀️💞社長良いですね〜!今回のお相手は社長にさせていただきます!ご提案ありがとうございました🥰 (2022年1月5日 22時) (レス) @page33 id: 15b2d79f8c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ごま油 | 作成日時:2021年9月19日 22時