普通なライバー 2

・ナンパの話 ページ48

葛葉side

『お待たせ』
「えっ…」

本社に行こうと叶と歩いていたら、ナンパに遭遇した。
うわぁ、女性めちゃくちゃ困ってんじゃん。しかも結構若そうだし。

『くーちゃん助けてあげたら？』
『くーちゃん言うな』

かなり困ってそうなので声を掛けることにした。
大丈夫っすか、とかもっと他にあっただろうに、出てきた言葉は"お待たせ"。
彼氏か俺は。

「っ本当にありがとうございました！！」
『あ、いや…』

勢いよく頭を下げる女性。
首取れるんじゃね？

.

「いや〜！マジでほんとにありがとうございました！！まさかお2人だとは！！！」

元気よく話す女性、改め普付木夏。
俺らもまさか同業者だとは思わなかった。
そしてもちさんから聞いていた方向音痴はマジモンだったみたいだ。

やっとのことで本社に着いた俺ら。Aとはそこで別れた。本名はさっき教えてもらった。意外とかわいい名前してた。

打ち合わせをして暫くすると、慌てた様子のスタッフが入ってきた。
"普付木さんは見ていないか"と。

また何かあったのではないかと思い、そこにいたスタッフ総出で捜索が始まった。もちろん俺らも。

『俺こっちのスタジオ見てくるわ』
『うん、よろしく』

俺がもし人目につかないように隠れるのならここら辺かな、という場所。
ドアを開けると、いた。人見知りが役に立った。

「あ、葛葉さ、」
『何してんの』
「ごめんなさい、すぐ戻りま…ヒェッ」

手が震えてるような気がした。
やっぱりかなり怖かったんじゃん。

『大丈夫』
「え」
『怖かったんだろ』
「…はい。ごめんなさい」

俯くA。何も悪くないのに。

『俺だって声かける時怖かった…すよ』
「そうなんですか」
『急にお待たせとか言っちゃったし』
「…ふふ、めちゃくちゃ嬉しかったですよ」

やっと笑った。
もちさんとか明那がコイツにゾッコンな理由がわかった気がした。
なんか俺もスムーズに話せちゃってるし。

『でもさすがにそろそろ…は？』

寝てる。コイツ寝てる。仮にも先輩だぞ。
…安心したのかな。
てか髪の毛サラサラだな。

『…』

ちょっとだけ。
興味本位で触ってみただけ。

ドアが開いた。

『あ、葛葉もいた。
…お取込み中？』
『ちげぇし』
『はいはい行くよ。なっちゃん、起きれる？』
「ッハ！！私寝てた！？…ちょっ葛葉さん待ってくださいよ〜」

いや起きたらうるさいな。
まだ感触が残る掌を見つめ、足早にその場を去った。
湧き上がる感情には、気づかないフリをした。


.

・隠してた想いの話→←ご挨拶※追記

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