残暑見舞い【夏油傑】【男主】【呪術廻戦】 (ページ26)

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類感呪術④ ページ26

とたんに悲しげな、諦めきれないといった表情になる。スマートフォンは買い与えられていないのでそういった情報を調べることができない。そもそもここ最近、何かあったのか、電波が繋がらっておらず、テレビもラジオも機能しない。幸い毎朝やってくる新聞はあるものの、やはり両者に比べると不便である。

新聞の大きな見出しを見ると、そこには丁度花火大会の日、とんでもない雨が降るといった内容の記事が大々的に載せられていた。

少年はそれをみて諦めがついたのか、わかりやすいくらい気を落ち込ませた様子を見せた。肩を下げ、うつむいている。
これも唯一自分の理解者であった祖母との思い出だったのだろう。

「A」

「？はい」

「花火大会に敵うかはわからないんだけど」

襖が開かれ、雑貨置きになっているところから、それは出された。
いわゆる、手持ち花火のセットだ。スーパーの割引シールのように、増量中と書かれたステッカーが後付けされている。

「これ、やろうよ」

みるみる内に顔に生気を取り戻していった。今の時代の子供がこんなに花火に嬉々とするのか、一般の認識としては怪しいところだったが、スマートフォンも買い与えられない、友達もろくにいない人間にとってはこれもまた楽しみなのだろうと、そう思えば存分に付き合う気になるだろう。

「いろいろ入っているみたいだね、ネズミ花火とか……線香花火も」

少年は興味深そうに袋を物色していた。色々種類のある花火に、これはなんだとか、あれはなんだとか、説明をうければうける程、彼の目はまた彩られていく。

「楽しみだなあ」

そう、感嘆を飲み込んだように言った。