【神谷将人】ファーストレディ.2.【あなたの番です】

じゅうにのゆびわ ページ12

｢…神谷さん、離してください｣


｢…はい？どうかしました、｣






私を連れてってくれてるのに

今だけでも選んでくれた筈なのに

嬉しくない。


全然、嬉しくない。


ちっとも、嬉しくない。



むしろさっきより

胸が痛くて苦しくて辛くて悲しくて

泣かないようにって唇を噛んでも

涙を堪えることすらできない。




結局あっちに戻るなら

思わせぶりなこと、

しないでほしかった。







｢なんですかいきなり、

どうして泣いてるんです｣






これ以上幻滅されたくない。


ただでさえ泣いてる今の現状ですら

めんどくさいって思われてるに決まってる。



下を向いたままゆるゆると首を振ると

上から大きめなため息が聞こえて






｢…めんどくせぇなぁ｣






その一言に血の気が引く。



ああもう嫌われたんだ



それしか考えられなくなって

動くことができなくなる。




立ち止まっていた私は

強く腕を引いた神谷さんによって

さっきよりも何倍もの速さで歩かされる。





もうきっと終わりなんだ。


そう考えたら自然と涙は止んだ。



せめて最後は泣かずに終わりたい。

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