検索窓
今日:3 hit、昨日:14 hit、合計:29,333 hit

五章 薬・怒る ページ6

弥生はパチリと瞬きをした後、にっこりと笑う。

「御免、飲んじゃった。」

「貴方、祈る気ないでしょう……?」

安吾がどこか疲れた様に云った。

うん、と弥生が普通に答えた。

「嗚呼、頭が痛い……。」

「其れは大変だ!ほら、頭痛薬あげるよ。」

そう云って、弥生は傍にあった鞄の中からやや乱雑に箱を取り出した。

チラリと見て確認した後、流れのまま、はい、と安吾に渡す。

「きっと仕事の所為だろう?その薬、善く効くよ。」

どこか虚ろに笑いながら弥生が云った。

「では、今日は此の薬を飲んで寝るとしますよ。」

安吾は薬を鞄に仕舞うと、それでは、とドアから去って行った。

安吾が歩いた事でかき乱された紫煙が宙を漂う。

「バイバイ。」

と太宰と弥生が同時に云って、同じ動きで安吾に手を振った。

「仲が善いんだな。」

私も安吾の背中に手を振りながら云った。

太宰が、
「えー……。」
とやや悔しそうと云うか悲しそうに声を上げる。

弥生は、
「そうだよ!仲が善いのだよ!」
と嬉しそうに云った。

同じ言葉でも、此んなに反応が違うのか。

私は感心した。

弥生が、ポンポンと私のグラスが前に置かれたスツールを叩いた。

「ほら、織田作も早く座って!今日は愛しい君の声があまり聞けていないのだよ!」

「愛しいのは織田作だけかい?」

太宰が茶化す様に云った。

「真逆!云っただろう?三人とも好きだし、愛していると。」

弥生は、至極真面目な声で答えた。

目も、表情も真剣だ。

其の様子が、何となく可笑しくて私は吹き出した。

太宰も、クスクスと笑っている。

「ちょっと、此方は真剣なのだよ!」

弥生さん怒っちゃうぞと楽しそうな声が聞こえる。

「否、悪い悪い。」

私はそう云うと、太宰と弥生の真ん中の席に座った。

六章 弥生→←四章 フラグ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.5/10 (22 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
36人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

味の素 - 天才ですね、分かります (2018年11月22日 16時) (レス) id: dc2caa7110 (このIDを非表示/違反報告)
永魔堂(プロフ) - 黒崎メアさん» リクエスト有難うございます!少し書くのに時間がかかってしまうかもしれませんが、リクエスト、確かに承りました! (2018年11月7日 15時) (レス) id: cddf6c3e9e (このIDを非表示/違反報告)
黒崎メア(プロフ) - 恋愛系でも良いのなら、何時もと違うドSな太宰さんに壁ドンされ、顔を赤くする弥生が見たいです。 (2018年11月4日 18時) (レス) id: 970964fd31 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:永魔堂 | 作成日時:2018年10月29日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。