お別れ会 ページ40
「帰ってほしくないよぉ、ここに居てよ〜」
「もうAちゃん、はい鳥皮食べて元気出して」
「うー、食べる」
居酒屋の個室の中、４杯目のグラス片手に机に突っ伏してごねる彼女に焼き鳥を一本差し出す。素直に受け取りもぐもぐと咀嚼する彼女の目が潤んでいるのは、アルコールのせいなのかそれとも。
美味しいと呟くAちゃんの頭を撫でると、彼女は目を細めて猫みたいに擦り寄ってきた。珍しくかなり酔っているようだ。それもそうか、多分おれより飲むペースが早い。
「明日の為にお別れ会しようとか言った本人がこれだもんなー。あ、オレ豚バラ追加しよっと！」
「じゃあついでに揚げ出し豆腐も頼む」
「杏のソーダ割り頼む」
「田噛女子かよ！」
居酒屋と目の前の仲間たちの喧騒の中、横目で見た彼女は空のグラス片手に食べ終わった焼鳥の串を咥えて拗ねたような顔をして。膝を抱えておれに寄りかかって動かないでいた。
「Aちゃん、これ美味しいよ。ほら、あーん」
彼女の手からグラスを取り上げて適当に料理を口元に持っていく。彼女は抵抗もせずにそれを口に含む。美味しい？と聞くとこくんと頷く。あ、かわいい。
「なんだか親子みたいだよ」
佐疫が向かいで笑う。ぴくり、Aちゃんが反応を示して顔を上げた。
「おやこ？」
呟いて、潤んだ瞳がおれを見据える。微かに不満の色が滲む視線から目を逸らさずにいると、不意にゆっくりと彼女がおれの肩に片手を添えた。膝立ちした彼女が腕に力を入れると、油断していたおれは驚くほど簡単に仰け反るように体勢を崩した。
「Aちゃん、」
「こいびとですよねぇ？」
後ろ手をついて胡坐をかくおれの片足に小さな彼女が乗って、とろんとした瞳がすぐそこで細められた。頬から、首筋胸元と細い指がつうとなぞっていく。向き合った顔が少し傾いて、ゆっくりと近づいてきて、
「A！正気に戻れ！」
一気に離れた。過保護斬島がAちゃんの腕を引いたようだ。
「Aちゃん飲みすぎだよ、木舌じゃないんだから」
「すきなひとと、きすしてなにがわるいんですかぁっ」
「場所が悪いわ馬鹿者！木舌じゃないんだぞ！」
「じゃあ、家ならいいですか」
拗ねたように言う彼女に谷裂が呆れたように溜息を吐いた。
「好きにしろ」
「やったぁ！」
手放しで喜ぶAちゃんがこっちを向いて子どもみたいに笑った。
「木舌さん、だいすきですよ！」
そんな事言われたら、場所なんか考えるはずないだろ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 300人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まびの。(プロフ) - 鈴菜さん» 鈴菜さん、コメントありがとうございます！こんな化石のような小説に……わたしの願望(欲望)を詰め込んだ木舌さんになっておりまして恐縮ですが、可愛いと思っていただけて幸いです( ^o^)続編…途中までですが、よろしくお願いします…… (2020年8月24日 20時) (
レス) id: 744b07ad85 (このIDを非表示/違反報告)
鈴菜 - 木舌さんがいちいち可愛いんですよ…！(嬉)もう、最後の方は涙が…。続編も読ませて頂きます！ (2020年8月23日 17時) (レス) id: 887197f4b6 (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 最後で泣きそうになってしまいました・・・・でもとっても面白かったです！ (2016年7月6日 20時) (レス) id: bf8b5df6a4 (このIDを非表示/違反報告)
みっきーω・`(プロフ) - ひょええ…冬だからサムイな…サイトですか…お手数ですが、URLをはっていただいてもよろしいでしょうか？ (2015年11月29日 3時) (レス) id: 332ae38f5d (このIDを非表示/違反報告)
まびの。(プロフ) - みっきーω・`さん» これは･･･みっきーさんが風邪をひく前に更新しないと･･･（笑）今はツクールでの執筆はやめてサイトの方で更新しているので、終わるとしたらそっちでかなあと思ってます。頑張りますね！ (2015年11月29日 3時) (レス) id: 5abcfed697 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まびの。 | 作成日時：2015年2月28日 14時
