谷裂さんと肝試し ページ11
「ぁ･･････、」
「いいか、よく聞け。俺は亡者が出てくるまでお前の後ろを身を潜めてついて行く。お前はあくまでも囮だ。本当に危険だと思ったらすぐに逃げろ」
「････は、い」
実物を前にすると、なるほどこれはとんでもなく不気味だ、有名な心霊スポットになるだけの事はある。先程までの笑顔は跡形もなく消え、膝が笑う。持ってきていた懐中電灯のスイッチを入れようとするけれど上手く力が入らない。
「どうした」
「い、いえ、だいじょう、ぶ」
谷裂さんが心なしやんわりと声をかけてくれるが、喉まで震えて発した言葉は頼りなく揺れた。でも、ここにいる亡者がもし何か手がかりをくれれば、谷裂さんたちは帰れるんだ。お手伝いをしなければ･･･。それに、いざとなったら、谷裂さんが守ってくれる。
わたしの様子を窺う彼にぎこちなく笑って見せて、わたしは一寸先も見えないトンネルに足を踏み入れた。
じゃり、じゃりと走りやすいスニーカーが地を踏む音がトンネルの中にこだまする。ゆっくり振り向く、けれど入口はおろか谷裂さんの姿さえ見えない。涙目で足を進めていると、不意に人の声が聞こえた、ような気がした。立ち止まって辺りの様子を窺うけれど、何も分からず。
「･っ･･え、」
「！」
聞こえた。間違いない、人の声がした。後ろの方から。でも谷裂さんの声じゃない。振り向いても何も見えず、谷裂さんからも何も指示がないからとりあえず牛歩を再開する。歩き始めるとまた、途切れ途切れに言葉が聴こえる。何と言っているのかは分からない。
･･･いっ･･え。そんな感じ。でも何の気配もない。谷裂さんには聞こえていないのだろうか、彼は何も言わないどこにいるのかも分からない。不安で、怖くて、でも不思議なことに歩む足は止まらない。声が、する。
イ ッ ポ マ エ
「え？」
不意に懐中電灯に照らされて見えた足元には、大きな亀裂が入っていて、わたしの足は、イッポマエニ。これ、落ち･･･
「い、いやぁ!!」
不快な浮遊感を感じた瞬間、真横に楽しそうに、けらけらと歪に笑うヒトの影があった。地についていたもう片方の足が離れた瞬間、恐怖心にかたく目を瞑った。ごめんなさい、力に、なれませんでした、
感じるはずの衝撃はおろか浮遊感すらもぴたりとなくなった。その代わり急激に身体を引き寄せられ、足が地面についている感覚が戻ってきた。
「どうやら読みが当たったらしいな」
呆然とするわたしの頭上から気怠い声が降ってきた。
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まびの。(プロフ) - 鈴菜さん» 鈴菜さん、コメントありがとうございます！こんな化石のような小説に……わたしの願望(欲望)を詰め込んだ木舌さんになっておりまして恐縮ですが、可愛いと思っていただけて幸いです( ^o^)続編…途中までですが、よろしくお願いします…… (2020年8月24日 20時) (
レス) id: 744b07ad85 (このIDを非表示/違反報告)
鈴菜 - 木舌さんがいちいち可愛いんですよ…！(嬉)もう、最後の方は涙が…。続編も読ませて頂きます！ (2020年8月23日 17時) (レス) id: 887197f4b6 (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 最後で泣きそうになってしまいました・・・・でもとっても面白かったです！ (2016年7月6日 20時) (レス) id: bf8b5df6a4 (このIDを非表示/違反報告)
みっきーω・`(プロフ) - ひょええ…冬だからサムイな…サイトですか…お手数ですが、URLをはっていただいてもよろしいでしょうか？ (2015年11月29日 3時) (レス) id: 332ae38f5d (このIDを非表示/違反報告)
まびの。(プロフ) - みっきーω・`さん» これは･･･みっきーさんが風邪をひく前に更新しないと･･･（笑）今はツクールでの執筆はやめてサイトの方で更新しているので、終わるとしたらそっちでかなあと思ってます。頑張りますね！ (2015年11月29日 3時) (レス) id: 5abcfed697 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まびの。 | 作成日時：2015年2月28日 14時
