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帰り道、見慣れた街並みをふたりで歩く。よくこの通りで彼女が俺を見つけては介抱してくれたのを思い出す。
「なあ、さっき大声で叫んでたあれさ、俺のこと？」
「……あれって、」
「あのひとの一番になりたいって」
「……聞かなくてもわかるくせに、」
「はは、そうだね、いじわるな質問したわ。ごめん」
「……いいですけど、べつに」
すこし不満そうな、恥ずかしそうな彼女を見ながら、かわいいなあ、と思う。けれど同時に、どうしても亡くなってしまったあいつがちらつく。顔も声も性格も、何もかもが違う彼女を、無意識に「あいつ」と比べてしまっていることに気づいて、泣きそうな気持ちになる。
「……俺はね、向き合いたいとは思ってる、Aと」
「……うん、」
「でも、何年待たせるかわからないし。待たせた挙句、好きになれなかったってことも、あるかもしれない」
「うん」
「それでもいいなら、俺があなたのこと好きになるまで、幸せにできると思うまで、待っててほしい、……けど、」
「けど、？」
「それまでに他に好きなひとができたら、そのときは、」
そう言おうとした瞬間、彼女の細い体にぎゅ、と抱きしめられる。
「……私は、ずっと�眸耄匹気鵑里海箸�好きなんだと思う。だから、いつまででも待ちます」
「いつまででもって、どれくらい？」
「今はまだわからないけど……文字通り、ずっと、です。でも�眸耄匹気鵑�嫌なら、待つのはやめるし、」
「俺は嫌なんかじゃないよ」
「……え、」
「ずっと、あなたのこと嫌だと思ったことなんてないですよ、」
彼女の体温を感じながら、そう呟くと、彼女はしずかに涙を流した。泣くほど愛してくれているというのに、俺はどうして彼女のことを心から愛せないのだろう。
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作者名：徒歩 | 作成日時：2024年2月13日 15時
