極彩色の世界のなかで (ページ16)

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「……え、……髙比良さん、」

彼女は俺を見つけて一瞬固まると、みるみるうちにその頬を赤く染めていく。俺はその姿に思わずふは、と笑った。あまりにもその姿が愛らしかったから。ケムリも彼女と一緒のテーブルに座っている女の子も、その様子をぽかんとした顔で見ながらも、徐々にああ、なるほどね、といったような表情に変わっていく。

「……笑わないでください、」
「や、だって。あなたがあまりにも、かわいかったから」
「……そういうことはほんとに好きなひとに言うもんですよ、」
「俺があなたのこと嫌いっていつ言ったのよ」

何度か会話の応酬をしているうちに、じゃあ俺はここらへんで失礼するわ、とケムリが笑いながら言う。彼女の友達らしき子も、あ、じゃあわたしも、と手を挙げた。

じゃあ俺らでどっか行きますか。あ、俺、松井っていいます。あ、わたしあかりです。などと和やかに話しながら出ていくふたりを見送って、いよいよふたりきりになる。

「そういえば、名前、聞いてなかったですね」
「あ、はい、Aです」
「Aさん。下の名前は？」
「A、ですけど、」
「A。こっちのほうが呼びやすいな、Aでいい？」
「……はい、……」

耳まで真っ赤にしている彼女に思わず顔がほころぶ。ほんとうに俺のことが好きなんだなあ、と思う。

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