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「なるほど、つまり、Aさんの好きなひとには別の好きなひとがいて、その彼女はもう亡くなってる、ってことですね？」
「そういうことになるね」
仕事帰り、後輩に居酒屋にて恋愛相談をする。恋愛とは無縁の私にこんな日がくるとは思わなかったが、恋愛経験豊富な彼女に聞けば大体のことは解決するだろう。
「難しいですけど……でも、勝ち目ありますよ」
「え、どこに？」
「まず、ほんとあなた俺のこと見つけるの得意ね。これです」
私にわかるように説明を始める彼女はさながら探偵のよう。うんうん、とうなずきながら私もメモを取る新人探偵の気持ちで話を聞く。
「俺のこと見つけるの得意ね、なんて、好きじゃない相手に言いますか？」
「……まあ、悪くは思ってないだろうね」
「でしょ？そして極めつけはこれです。Aさんがいる居酒屋にわざわざやってくる」
「……え、いや、それは偶然だと思うけど、」
「いや、必然ですよ。大体ね、仕事帰りに何回も連続で倒れているところを見かけるなんて状況がおかしいんですよ。二回目以降は向こうもあの子来るだろうなあ、と思ってやってますよね？」
「や、それはさすがに……」
「二、三回会ってたら大体お互いの生活圏がわかってくるはずです。だから、きっとここにいるはずだろうと向こうも考えて意図的に来た。それに、仮にAさんのいる居酒屋に来たのが偶然だとしても、相手のことよく思っていなかったら声なんてかけないですよね？」
「……なんか、すごいね」
彼女の推理はあながち間違ってはいなかった。たしかに私のことをよく思っていないならあんなことは言わないし、わざわざ声なんてかけない。だけどほんとうにこれは「勝ち目」のうちに入るのだろうか。恋愛下手でかわいくもない私に勝ち目なんて、ないとしか思えない。
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作者名：徒歩 | 作成日時：2024年2月13日 15時
