極彩色の世界のなかで (ページ12)

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「……どうしてですか」
「どうしても何も、ないでしょう。二番目でいいとか、そういうこと、言っちゃだめ」
「……なんで、私はただ、」
「俺のそばにいたいだけ？」
「……はい、」
「だったらなおさら、やめたほうがいい。俺はこの先ひとを好きになることはないし、あなたのことも幸せにはできない。第一俺たち、名前も知らないでしょう」
「名前、教えたら、そばにいさせてくれますか」
「そういうことじゃなくてね、」

髙比良さんはまた困ったような顔をして、駄々をこねる子どもをなだめるような口調で言った。

「私のこと幸せにできない、って言うけど、私が幸せにするんです、髙比良さんのこと」
「……いや、逆でしょう、そこは」
「逆じゃないです。髙比良さんが酔って倒れてるとき、見つけてほしいひとが別にいたとしても、私が髙比良さんのこと何度だって見つけます、だから、」
「もういいから」
「……え、」

彼のひとみから光はとうに消えていた。そのひとみに映しているのは私の姿ではなかった。彼にとっての一番の彼女しか、そのひとみには映っていないのだ。

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