極彩色の世界のなかで (ページ11)

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「ていうか、なんで俺の名前知ってるの。あなた前、俺のこと知らないって」
「……すみません、テレビで見ちゃって」
「ああ、そっか。びっくりさせちゃったでしょう、ごめんね」

髙比良さんは苦笑しながらビールをひとくち飲んだ。その横顔に無意識に見とれていると、なに、そんなじろじろ見て、と笑われる。そんなふうに笑顔を向けられると、くるしくなってしまう。……好きになっちゃいけないひとなのに、このひとは。

「それにあなた、飲みすぎよ？俺が言うのもなんだけど」
「……ほんと、髙比良さんが言えたことじゃないです。いつも誰が介抱してると思ってるんですか」
「んはは、ごめんごめん。もうああいうことはないようにするから」

ああいうことはないようにする、とはこの場合、どういう意味なのだろう。もうやけ酒はしないようにするという意味か、もう私とは会わないようにするという意味か。後者だとしたら、私のこの行き場のない感情はどうすればいいというのだろう。

「……私、髙比良さんにとっての二番目でいいんです」
「……え？」
「一番になれなくたっていい。その、好きだった、人生そのものだった彼女のこと、忘れられなくたっていいんです。だから、髙比良さんのそばにいさせてくれませんか」

髙比良さんは困ったように笑って、それから一言だけ、うつむきながら言う。

「俺はやめときなさい」

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