極彩色の世界のなかで (ページ2)

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その日の仕事帰り、いつも通り家までの帰路を歩いていると、道の隅で倒れている男を発見した。

「えっ、あの、大丈夫ですか……？」

男はうずくまり、なにかぶつぶつと呟いている。おそらく酔っ払っているのだろう。

「……なんで行っちゃったんだよ、……」
「……え、あの、」
「……俺より先に……、行くとかさあ……なに考えてんだよ、ほんと……」

ぶつぶつと独り言のようだったそれが、だんだんと輪郭を帯びた言葉になって男の口から溢れていく。私には彼がどういう意味でその言葉たちを吐き出しているのかわからない。とりあえず今はこのひとを介抱しなければ、ということで頭がいっぱいだった。

「あの、救急車呼びましょうか、」

そう言うと、男はやっと私に気づいたのか顔を上げてこちらを見た。

「あ、……俺また、……すみません、大丈夫です」

男がすぐに立ち上がろうとしてよろめいたから、私は反射的に支えて、全然大丈夫じゃないですよ、と言う。彼はすべてを諦めたように笑った。

「心配なんで、送ります」

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