極彩色の世界のなかで (ページ1)

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深淵をのぞくとき、深淵もまたページ1

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髙比良さんのひとみに見つめられるたび、深淵をのぞいたような気持ちになる。深く、底知れない悲しみの一部分をすこしだけ見たような、そんな心情をほんの一瞬だけ、体験する。

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「叶わない恋って、したことあります？」

いきなり職場の後輩がそんな詩的なことを言うものだから驚く。いや、別にないけど、と答えると、そうですよねえ、と彼女は頭を抱えだす。

「なに、不倫でもしてるの」
「そういうわけじゃないんですけどねえ……」
「じゃあなに？」
「絶対にわたしは彼の一番にはなれないって、わかってるんです。だってもう彼にとっての一番がいるから。それでも追いかけたくなっちゃうんですよねえ」
「不倫じゃん」
「違います！叶わない恋ですよ！」

一番がいる、ということは浮気か不倫だろう、と思ったが、どうやら違うらしい。恋というのはよくわからないものだ。私にその「叶わない恋」とやらがわかる日はくるのだろうか。

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