□４． ページ5
·
新一と共に別のフロアへと入れば、子供たちが楽しそうにはしゃいでいるのが見えた。
私たちに気がついた哀ちゃんが優しく笑う。
「ほーんと楽しそうね、あの子たち」
「あんな小さなうちから飛行船に乗れるとは、園子くんに感謝せんといかんわい」
博士が哀ちゃんの言葉に賛同する。
…そうだよね、私が小さい頃は見かけたことはあっても乗ったことは無かったもん。
「彼らにとっては、まるで青空に浮かぶ雲に乗っているようなもんだからのぉ」
そんな博士の言葉に、ふ、と小さく笑いを零したのは新一だった。
博士は「ん？」と新一を見る。
「あ、いや…ちょっとガキの頃のことを思い出してさ」
柔らかな口調で昔の話を語り出す新一。
私はそんな彼の横顔をじっと見つめた。…もちろんその口から出たのは“蘭”の話。
「蘭の奴、初めて飛行船が飛んでるのを見た時…」
私の記憶にも微かに残っているその記憶。
飛行船が飛んでいるのを見て、蘭は“UFOが飛んでる”って私たちに伝えに来た。
「──ま、風船の化け物みたいなのが悠然と空を飛んでるんで、びっくりしてそう思ったんだろーけど」
懐かしむように優しい表情で喋る新一に、少しだけ胸の奥がもやっとしたのは気が付かないふり。
…幼馴染にヤキモチだなんて恥ずかしいもん。
二人共大好きだから、ヤキモチなんて妬きたくない。
「あら、メルヘンチックなお姫様の自慢話？」
「べ、別に自慢じゃねーよ」
「…でも、十分女の子らしさをアピールしてるわよ。私だって、この空飛ぶ魔法の船に乗って…雲の上の夢の国に飛んで行きたいわ…」
哀ちゃんにしては珍しい言葉。
ポカンとする博士と新一の隣で、思わず笑いが溢れる。…馬鹿にしてるとかじゃなくて、可愛らしいなっていう。
そんな私の気持ちは「冗談よ」という冷めた哀ちゃんの言葉で壊されたけど。
·
『可愛いお話だったのにー』
「あら、あなたのブルーな顔つきをいつも通りに治すには十分だったと思うけど？」
『…ッ、へ！？』
クスリと笑う哀ちゃんに、ぶわわっと顔に熱が集まったのが分かった。
『あ、哀ちゃん、気づいて…』
「当たり前よ」
『うぅ…』
恥ずかしい…と顔を背ける私に、哀ちゃんはまたもや小さく笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1150人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
(名前)ひよ(プロフ) - コメント失礼します。最近占いツクールで主さんの作品を見させてもらっています。質問ですが、うざさ99%の作品でパスワードがかかっていて、作品を見ることができません…。パスワードとはどんなのか教えてくださると嬉しいです！ (2020年11月23日 9時) (
レス) id: 8296576305 (このIDを非表示/違反報告)
す(プロフ) - 遊び人さん» ここだけの話、好きです(小声)隙あらば狙ってます(小声) (2020年8月31日 21時) (レス) id: 3a75016096 (このIDを非表示/違反報告)
遊び人 - 快斗って夢主のこと好きなんですか？？？星が綺麗って言ってたし顔赤くしてたし！！よかったら教えてくださいいぃ！！ (2020年8月31日 20時) (レス) id: 08ebd560d2 (このIDを非表示/違反報告)
Akiko Tanei(プロフ) - 『一部始終しか見ていない』とありますが、『一部始終』とは最初から最後まで・細々としたところまでという意味なので、文章の意味的に『始終』はいらないと思いますよ。 (2020年1月6日 0時) (レス) id: ac2f5c909d (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ(プロフ) - 蓮花さん» 覚えている人がいてくれたなんてびっくりです…！！超嬉しい！！笑 ありがとうございます！！ (2019年6月24日 7時) (レス) id: 9511f3d914 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぱぴこ。 x他1人 | 作成日時：2019年5月4日 11時
