第九話 ページ10
非番につき街中を歩いているところ、前方から見覚えのある人物が来るのに気がついた。
｢あれは…A？｣
こんな時間にどうしたのだろう。今の時間ならまだ学校にいるはずだ。もう帰っているということは、体調でも悪くして早退したのだろうか、足取りもおぼつかないように見える。彼女が敵か味方かという前に、一人の人間として彼女を心配し、声をかけた。
｢…A？｣
｢え？｣
下を向いていたため、私に気づかなかったのだろう。顔を上げたAは驚いていた。目は少し虚ろで、どこか恐怖の色を感じる。
｢や、やぁA、具合が悪そうだがどうしたんだい？｣
｢…｣
｢A？｣
返事がないので、もう一度名前を呼ぶと同時にAは気絶してしまった。突然のことに驚いたが、どちらも騒ぎを起こしたくない身なので急いで彼女をだき抱え路地裏にはいる。もう一度呼びかけてみるも返事はない。
｢くっ…仕方ない…｣
彼女を家を知っているはずも無いので、悩んだ末にマッスルフォームになりAを姫抱きした後、急いで自分の家に向かうことにした。
Aをベッドに寝かし、様子を見る。魘されてるのだろうか酷く苦しそうである。
｢…っ。…ぃ｣
｢A！A！｣
｢…んせいっ、せんせい…いやだ｣
Aが苦しそうに手を伸ばすので咄嗟にその手を掴んだ。
｢大丈夫、大丈夫だ｣
Aの言った｢先生｣とは誰のことなのだろう。この数日間Aのことを見張っていると、だんだんと敵の可能性はゼロに近づくばかりだ。OFAのことを誰かに広める様子もなさそうだし…。
A、私は君を知りたい。
｢っ…、こ、ここは？｣
｢A！大丈夫かい？ここは私の家だ｣
彼女が起きたことに驚き咄嗟に手を離す。手はまだ微かに暖かく、その暖かさが名残惜しさを感じさせる。
｢オールマイト…。ごめんなさい急に倒れてしまったのよね｣
｢私の方こそ勝手に家にあげてしまってすまない｣
｢いいえ、助けてくれたんでしょう？ありがとう｣
｢そんな全然大丈夫さ、酷く魘されていた様だったが大丈夫かい？｣
｢え、ええ…大丈夫｣
Aが少し動揺したのを見逃すはずもなかったが、魘されていた夢の話をすぐにさせるのもどうかと思ったため、今はあえて深く探らなかった。しかし、この気遣いはこの後無意味となる。
｢A｣
今、彼女のことを聞かずしていつ聞くというのだろうか、今しかない。
｢教えてくれ、君のことを。君は一体、何者なんだ｣
｢…私は｣
｢私は後継者だった｣
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作者名：霞莎 | 作成日時：2021年1月14日 22時
