「お前に惚れた、俺の負けでいい。」 ページ45
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目の前の赤に、手を伸ばしたんです。
どうせ敵わない、って。
どうせ、叶いっこない、って。
わかりきっていたんです。
わかってたのに、ちゃんと。
それでも、手を伸ばして、
追いつきたくて、必死になりました。
何度も転んで、何度も傷ついて、
何度も泣いた日々でした。
それでも、その全てが愛おしいと思える理由は、
君が好きだからです。
「さ、えく、」
冴「泣くなよ、」
「冴くんっ、」
冴「おい、人の話聞けって。」
「さぇ、く、」
ポロポロと涙が溢れてしまったんです。
追いつけないと思っていたから。
届かないと思っていたから。
そんな彼が、目の前にいて、
綺麗な瞳に、私を映していたから。
好きだ、好き、大好き。
とめどなく溢れてしまう感情がありました。
心が言うんです、好きなんだと。
心の奥底から、糸師冴が好きなんだと。
「すき、だいすき、
………………さえく、が、すき。」
だから、言うんです、ちゃんと。
この運命の赤い糸が結ばれてなくても、
足掻いて、結んでみせるから。
大通りの真ん中、人集りに囲まれたそこに私たちはいる。
ザワザワとした騒ぎを聞き付けたのか、
警察まで来ていた。
けど、私の先程の言葉を聞いて、
何かしらの事故だとかでは無いことを、
理解していたから。
ただただ、見守られていた。
はぁー、っと君はため息を吐き出しました。
そのあとに、視界が移り変わるようにと、
後頭部に手を添えられて、
彼の胸元に収まっていくから。
もう泣いているのに、
さらに涙が溢れてきてしまう。
冴「負けでいーわ、」
「え。」
冴「………お前に惚れた、俺の負けだ。
お前みたいな馬鹿なヤツ、俺しか扱えねぇだろうしな。」
恋をしたんです。
きっと、夢見物語で終わってしまうような、
そんな恋を。
ハッピーエンドに辿り着けないと思っていた、
そんな恋を、していたんです。
何度も傷ついて、
何度ももうやめようって、思いながらも、
その運命の赤い糸に、手を伸ばしたんです。
「やった、」
私は酷く単純な女だから。
誰よりも馬鹿な女だから。
そのたった一言に、どれほど喜んじゃうか、なんて、
知らないでしょうね。
「冴くんに、勝っちゃった。」
彼の首に腕を回して、
ぎゅうっ、と抱きついてやりました。
苦しいぐらいに、強く抱きしめて。
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夏蜜柑 - 冴ちゃん最推しなのでもう、最高でした!! (2023年2月1日 8時) (レス) @page48 id: 5a9946419b (このIDを非表示/違反報告)
甘いものと眼鏡(プロフ) - 完結おめでとうございます!毎朝この小説の更新を楽しみにしてました!!これからもずっと応援してます!!! (2023年1月29日 7時) (レス) @page50 id: 10f6e45005 (このIDを非表示/違反報告)
夜空(プロフ) - 完結おめでとうございます👏🏻🎉✨最初から最後までとても素晴らしい作品でした。ことりさんの書く作品は、どれも読んでいてワクワクするようなものばかりです。これからも、他の作品での活躍を楽しみにしています🌷🤍 (2023年1月28日 8時) (レス) @page50 id: fb39a53612 (このIDを非表示/違反報告)
お饅頭(プロフ) - 完結おめでとうございます!そしてお疲れ様でした!!完結してしまったのが寂しくも嬉しくも感じます、完結までが完結してしまうとあっという間に感じました。改めて素晴らしい作品を完結まで続けてくださりありがとうございました!そしてお疲れ様でした! (2023年1月28日 1時) (レス) @page50 id: c1e1b186de (このIDを非表示/違反報告)
tomato(プロフ) - さいっこうに面白かったです!冴オチの夢小説はこれが初めてだったんですが、面白かったので他のも見てみようと思います!文章の書き方とか、文字の選びが凄い好きなので、他の作品もみようと思います!お疲れ様でした! (2023年1月27日 23時) (レス) @page50 id: 9d5bc87a7c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ことり | 作成日時:2023年1月1日 2時