推しが路地裏から飛び出してきた。[ 終 ]

｢早く行きなさいよ、ばか。｣ ページ41

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｢わ、私！｣




何か、言わないと。




何か言わないといけないのに、
声が出ない。

なんでよ、ナタリーさんにちゃんと言いたいのに。




そんな隙出さない、って。
離すつもりなんてない、って。

言いたいのに、声が、喉が張り付いてて出ない。




思わず、泣きそうになりながらも、
ちゃんとナタリーさんを見たのなら、

ばしっ、と背中を叩かれた。





ナタリー『おばか、』



優しいような微笑みを向けられる。




涙が、溢れてしまう。
こんなにも、優しいあなたを傷つけながらも、

譲らないって決めたのは私なのに。





愛空｢Aちゃん、｣


｢あい、くさ、｣





愛空｢人を好きになるってことは、
自分も周りの人も傷つくこと。
それでも、欲しいって思ったんなら、
ちゃんと手に入れないと失礼でしょ？｣

｢け、ど、私、私！｣





愛空｢ナターシャちゃんの気持ちを無下にするつもり？｣

｢ちが、ちがくて！｣





深呼吸をした。


2人からの目線を感じながらも、
ナタリーさんに向き合う。


ちゃんと、声を出して言わないと。





私らしくいたいから。
私にはこれしかないから。





｢絶対に、離さないし！
絶対に、奪われませんからね！！｣




そう、宣言をしたのならば、

目を見開いたかと思えば、
わしゃわしゃと頭を撫でられる。





それに驚きながら、撫でられたのならば、

頬を優しく引っ張られた。





ナタリー｢なまいきむすめ、｣

｢チョイスがおかしいんだよなぁ。｣





ナタリー｢早く行きなさいよ、ばか。｣





その言葉の後に、
背中を押されて、ホテルの部屋から出される。



ドアが閉じていく隙間から見えた彼女の笑顔は、





とても綺麗だったから。



この気持ち、忘れないようにしよう。
ちゃんと、覚えておこう。


この傷つきも、なにもかも、ちゃんと。





ちゃんと、背負っていこう。
ホテルの部屋の前から走り出した。


彼を探して、見つけたいから。






よくドラマである、探しに行くあれ。
なんで電話しないんだろう、とか思ったけど、

よく分からないけど。





この目で、ちゃんと彼を見つけたいと思ったから。

ちゃんと、私のこの声で、
彼に気づいて欲しいと思ったから。





これもまた、わがままですか。


これもまた、馬鹿だと言われますか。




言われてもいいや。
君に会えるなら、私は何でも良かったりするよ。

ねぇ、冴くん。





見つけに行くね。

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