あなたがライバルでよかった。 ページ40
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静寂だけがそこにあった。
お互い泣いていて、
どうしようも無いほどに、譲れなくて。
ぽろぽろと零れる無色透明が、
夕焼け空に反射して煌めいていたから。
揺れるような瞳を見つめる。
伸ばされた手が、私の頬に触れるから。
思わず、目を見開いてしまった。
ナタリー『私、嫌いだったのよ、あなたのこと。』
語られるその言葉を聞いて、
私はどうしたらいいのか、
分からなくなる。
ナタリー『私が先にすきになったのに、
冴のことを奪おうとするんだもの。』
泣きながら笑うその表情が綺麗に見えて。
けど、涙を拭いながら、
困ったように言うものだから、
分からなくなる。
ナタリー『だから、映画の日、
わざと邪魔したの。
冴は私とサッカーを選ぶってわかってたから。』
彼女から語られたそれは、あまりにも突然だったから。
でもあの時の私は、
どうしようも無いほどに、馬鹿だったから。
ただただ、彼女に嫉妬するだけで終わっていた。
けど、ナタリーさんは違う。
ちゃんと嫉妬して、好きだから邪魔したから。
普通なら、ムカついたりするべきなのに、
私には、凄いとしか思えなくて。
だって私、何回も逃げたから。
ナタリー『けど、本当は分かってたのよ。
ホテルのビュッフェの時に、冴があなたを追いかけた時に、
私、勝てないんだってこと。わかってたの。』
目を伏せて、言い聞かせるような声で。
私に語りながらも、
自分の気持ちに区切りを着けるようにと。
そんな彼女は、やはり大人だし、
目の前を見ながらも、未来を見ている。
私と彼女の大きな違いがあるならば、
ここなのかもしれない。
ナタリー『だから、』
彼女との距離が近くなる。
おでこを合わせられて、
まるで、覚えておくように!と言われている感覚になる。
揺れた瞳が合うから。
私は、きっと。
ナタリー『少しでもスキを見せたのなら、
私、手加減しないからね。
ちゃんと、掴んでおかないと、奪っちゃうんだから。』
強めのデコピンをされて、
痛くておでこを抑える。
明るいような笑顔を向けられるから、
私は、思わずその場に固まってしまう。
あ、良かった。
ナタリーさんがライバルでよかった。
痛いぐらいに、
恋ってなんなのか教えられた気がする。
あぁ、やっぱり、
ナタリーさんのこと、尊敬したままだし、
ずっと応援していたいな。
ちゃんと、サッカー選手として。
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夏蜜柑 - 冴ちゃん最推しなのでもう、最高でした!! (2023年2月1日 8時) (レス) @page48 id: 5a9946419b (このIDを非表示/違反報告)
甘いものと眼鏡(プロフ) - 完結おめでとうございます!毎朝この小説の更新を楽しみにしてました!!これからもずっと応援してます!!! (2023年1月29日 7時) (レス) @page50 id: 10f6e45005 (このIDを非表示/違反報告)
夜空(プロフ) - 完結おめでとうございます👏🏻🎉✨最初から最後までとても素晴らしい作品でした。ことりさんの書く作品は、どれも読んでいてワクワクするようなものばかりです。これからも、他の作品での活躍を楽しみにしています🌷🤍 (2023年1月28日 8時) (レス) @page50 id: fb39a53612 (このIDを非表示/違反報告)
お饅頭(プロフ) - 完結おめでとうございます!そしてお疲れ様でした!!完結してしまったのが寂しくも嬉しくも感じます、完結までが完結してしまうとあっという間に感じました。改めて素晴らしい作品を完結まで続けてくださりありがとうございました!そしてお疲れ様でした! (2023年1月28日 1時) (レス) @page50 id: c1e1b186de (このIDを非表示/違反報告)
tomato(プロフ) - さいっこうに面白かったです!冴オチの夢小説はこれが初めてだったんですが、面白かったので他のも見てみようと思います!文章の書き方とか、文字の選びが凄い好きなので、他の作品もみようと思います!お疲れ様でした! (2023年1月27日 23時) (レス) @page50 id: 9d5bc87a7c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ことり | 作成日時:2023年1月1日 2時