推しが路地裏から飛び出してきた。[ 終 ]

正解が分からない。 ページ35

.





冴 side





空虚だらけの人生に、
より一層の穴ができた気分になる。



世界を知って、ストライカーを目指すのをやめて、

MFになってからも、




つまらない人生だと思っていた。
精々楽しいと思えるのは、

サッカーの時だけ。




腐りきってしまった日本でのサッカーはやはり退屈だった。



その先で見つけた、
手放しちゃいけない存在もあったろうに。





マネージャーの車に乗りながら、外を眺める。

隣にいるナターシャは、
ガイドブックを見ながらはしゃいでいた。





くだらねぇ、と思いながら、外の情景が頭に入り込んでいた。

見慣れたアイツと、
気に入らないあいつが、そこに居たから。





冴｢車止めろ。｣




ジローラン｢え？｣


冴｢今すぐ車止めろ。｣





ジローラン｢冴ちゃん！？｣


道路の端に寄せられた車。


振り返ってなにか聞こうとしてくるマネージャーの言葉も聞かずに、
ドアを開けて走り出していた。





イライラする、本当にムカついて仕方がない。

お前だって俺の事捨てたくせに、
何でそいつといるんだよ。





そこは、俺が。



そうしてやりたかったのに。






ぐちゃぐちゃになる感情たちと、
まともに動くこともない頭に、苛立ちが募るばかりだった。

思わず間に入ってからの言葉。





わからないってなんだよ。

なんで、ってなんだよ。
そんなの知らねぇよ。





冴｢んなこと、知るかよ。｣


｢は、｣





冴｢全部がムカつくんだよ、お前。｣

｢冴く、｣




冴｢けどそれ以上に、
お前のことになると、どうしたらいいのか、
分からない自分がムカついて仕方ねぇ。｣




振り回されるのはもう嫌だ、なんて言うけど、



俺だって嫌だわ。
お前に振り回されてばっかで、

どうしたらいいかなんて微塵も分からねぇ。




俺の言うことだけ聞いてりゃいいのに、

一丁前に反抗とかするし。
だから、俺だってお前のことがわかんねぇよ。





｢なんで、そんなこと言うの、｣

冴｢あ？｣





｢なんで、期待させるようなことばっか、言うの。｣




揺れ動く瞳を見る度に、
涙の理由が俺なたびに。



さらにムカついて仕方がねぇ。

なんだよ、それ。




期待させるようなこと、って。
知るわけねぇだろうが。



愛空｢すとっぷ、｣


｢愛空さん、｣





冴｢お前。｣




愛空｢天才ちゃんも罪な男だね。
後ろにいるあの子の気持ちは、どうなるの？｣




振り返ったそこに居たのは、
ナターシャだった。

傷ついて、傷つけて、傷つけられて。→←揺れ動いたその色。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す