推しが路地裏から飛び出してきた。[ 終 ]

Q . あなたにとって彼女とは。 ページ29

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愛空 side





その女の子は、どうにも目が離せない子だった。





最初は天才ちゃんの熱愛報道から出てきた子。
無邪気な笑みを浮かべているのが、

俺の好奇心を駆り立てた。




天才ちゃんに言えば、明らかなる怒りを向けられる。


交流会の時、
別に見えてしまったがため、




手を出しただけだ。

もちろん疑われたけど。




まぁ別にそこまで気にすることでもない。
天才ちゃんのことで話がしたくて、

ホテルのビュッフェに呼べばそこで鉢合わせ。





狙ったかどうか？


さぁな。
そのあと、逃げるようにと去った後の彼女と、

それを追いかける天才ちゃん。





取り残されたのは俺とナターシャちゃんだけ。



ナタリー『どーゆーつもり？』



愛空『ただ鉢合わせただけだろ。
狙ってないよ。』

ナタリー『そう？それならいいけど。
冴もなんであんな子なんか、』




愛空『普通のくせにって？』


その言葉にナターシャちゃんは、
目を逸らしていた。




暫くすると天才ちゃんが戻ってくる。

それに入れ違いのようにと外を出ようとする前に。




腕を掴まれて睨まれる。
それが、どんな意味かなんて知らないけどな。




愛空｢お前が捨てたんだろ。｣




そう残してから、あの子の元へ行けば、
キーホルダーを拾いあげながらも、


泣いていた。





そんなに泣くくらいなら、

世界が違うだとか、
何も無いとか、言わずに手放さなきゃ良かったのに。






胸元でなく一個下の彼女は、

世界の広さを知ったのかもしれない。







愛空｢世界が違う、ねぇ。｣





彼女が思い悩むとしたらそれしかないだろう。





俺はいつの日からか、
摘み取られて、同じ形にしか咲けなかったから。


もしこの子がそれさえも飛び越えて、





世界を見ようとする時は背中を押してあげたいとは思う。




｢すいません、色々と。｣



愛空｢別にいいよ。
おうちまで送ろっか？｣

｢いいです、さすがに帰れます。｣




愛空｢じゃあまたね、Aちゃん。｣





ぺこり、お辞儀をして駅へと向かう背中を眺める。



不意になったバイブ音は彼からのもので。
その文字列に笑みをこぼしてしまう。





冴[ あいつに近づくな。]





愛空[ 捨てた王子様にはもう関係ないことでしょ？]






そう言うと、既読だけがつくLime。
俺にとってのあの子は、


よく分かりもしないけど。





面白そうなことが起きそうだと思ったんだ。

捨てたのは俺なのに。→←傘を差し出す花の名前は。

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