「冴くんとは、世界が違うんだよ!」 ページ27
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それでも尚、糸師冴という男は、
自分の都合宜しく生きる男である。
はぁーーっ、と溜息を吐き出される。
それに肩を揺らす。
綺麗な緑の瞳が私を捉えた。
視線は混じり合わない。
冴「お前も、ナターシャも、何が言いてぇのか、
わかんねぇ。ちゃんと、言葉にしろよ。」
「は。」
冴「追いかけてきた理由なんてねぇよ。
あいつに泣かされたんなら、辞めとけって忠告。」
そんなの、いらない。
冴「修羅場ぐらいありそうだからな。」
そんなの、どうでもいい。
溢れ出てしまう感情たちが、
少しずつと私の心を壊していく。
息もできない海の中で、もがいても上には行けない。
むしろ、堕ちて、沈んでいくだけ。
手を伸ばしても、誰も助けてくれない。
スマホに付けていたキーホルダーを取り、
冴くんに投げつけた。
かしゃん!と音を立てたそれは、床に落ちる。
ぼろぼろと溢れ出たままの涙は、
止まるという言葉を知らずにいる。
目を見開いた君を見る。
何も言わずに立ち去ろうとすれば、
また腕を掴まれる。
冴「お前、何がしてぇんだよ。」
「うるさい、」
冴「さっきから黙って、何も言わねぇだろ。」
「うるさい、」
冴「言いてぇことあんなら言えよ。」
好きになっちゃ、いけなかったんだ。
今やっと知ってしまったから。
今やっと、ちゃんとわかったから。
ナタリーさんが、彼の隣に立てる理由を、
私は今、理解出来てしまったから。
これは、もうダメ。
堪えろ、私。
お願い。
「冴くんとは、
住む世界も!!!見る世界も!!
生きる世界も何もかも!!!!
全部違うの!!
冴くんにとって、気にしないことでも、
ありふれた事でも、よくある事でも、
私にはそうじゃない!!!
こんな傷つくなら、こんなに泣いちゃうなら、」
けど、でも、もう辞めにしよう。
傷ついて泣くぐらいなら、
嫌いになればいいだけの話なのに。
けど、嫌いになんてなれる訳でもないのに。
目元を拭いながら、
一生懸命声を出そうとする。
彼はどんな顔をしているのだろうか。
そんなの、わからないし、
分かりたくもない。
「好きにならなきゃ良かった、」
ふと視界に入った彼が、どんな顔をしていたのか。
そんなの、わかるわけがない。
どんなでも、関係ない。
そう、言い聞かせなきゃいけないから。
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夏蜜柑 - 冴ちゃん最推しなのでもう、最高でした!! (2023年2月1日 8時) (レス) @page48 id: 5a9946419b (このIDを非表示/違反報告)
甘いものと眼鏡(プロフ) - 完結おめでとうございます!毎朝この小説の更新を楽しみにしてました!!これからもずっと応援してます!!! (2023年1月29日 7時) (レス) @page50 id: 10f6e45005 (このIDを非表示/違反報告)
夜空(プロフ) - 完結おめでとうございます👏🏻🎉✨最初から最後までとても素晴らしい作品でした。ことりさんの書く作品は、どれも読んでいてワクワクするようなものばかりです。これからも、他の作品での活躍を楽しみにしています🌷🤍 (2023年1月28日 8時) (レス) @page50 id: fb39a53612 (このIDを非表示/違反報告)
お饅頭(プロフ) - 完結おめでとうございます!そしてお疲れ様でした!!完結してしまったのが寂しくも嬉しくも感じます、完結までが完結してしまうとあっという間に感じました。改めて素晴らしい作品を完結まで続けてくださりありがとうございました!そしてお疲れ様でした! (2023年1月28日 1時) (レス) @page50 id: c1e1b186de (このIDを非表示/違反報告)
tomato(プロフ) - さいっこうに面白かったです!冴オチの夢小説はこれが初めてだったんですが、面白かったので他のも見てみようと思います!文章の書き方とか、文字の選びが凄い好きなので、他の作品もみようと思います!お疲れ様でした! (2023年1月27日 23時) (レス) @page50 id: 9d5bc87a7c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ことり | 作成日時:2023年1月1日 2時