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近づいてくるやつみんなバカ。 ページ1

.




九井 side






金を作る天才と呼ばれてから、
どれくらい経ったかは、わからなかった。




金なんてもう要らないはずなのに、

手放せなかった。






近づいてくるやつは、全員、
俺のこの才能を欲しがった。






けど、俺がついていくのはイヌピーだけだ。



大寿に、誘われていても、
どうでもいいと吐き捨てた。







あいつが欲しいのも、俺の頭脳だろうから。





本を捲りながら、
つまらないと吐き捨てる人生に、



なんの音もしてないのに。









「ねぇねぇ、なにそれ!何読んでんの!」







高くて、でも耳に入り込んで、
一気に存在を認識させる声は、



俺の頭上から降ってきた。






アールグレイよりも薄い髪色を揺らしながら、
黒い瞳を細めた女がいた。


名前、確か、今井だったっけ?






見上げながら、見つめていれば、
首を傾げていたし、
遠くの方で彼女を見つめるクラスメイトが見える。





あぁ、こいつも、こいつもきっと。






「ねぇねぇ、九井くん!!!!」



九井「あ、え、なに。」








「チンチラって知ってる?」


九井「は?」





「私さ、チンチラ見た時に、
これは犬だ!!犬だよこれは!!
って自慢げに兄さんに話したらさ、」



九井「チンチラはネズミだろ。」



「そう、ネズミなの、うさぎかと思ったのに。」








こいつはさっきから何を言ってんだ。
何も気にせずに、


目の前の席に座っては、





俺を見てくる。





金が欲しいのか、また勧誘か。
それとも、油断させて拉致るかとか、


なんて、あれやこれやと彼女の行動を、




予測していても、その上をいつも行く。





「九井くんって頭いいよね、」




ほらきた。






「テストの点数高いやつ交換しない?
あ、私最高得点51なんだけどさ。」





違った。






九井「お前、何がしたいの。」


「流石にダブりたくないなって思う。」






金の匂いがしなかった。
取引相手になるわけでもないし、



俺と手を組もうとかもないし、

金をせびるわけでもなかった。






普通に話しかけてきて、


変な話ばっかで、可笑しくて。
あぁ、







これが普通ってやつなんだ、とも思った。






俺とはかけ離れた世界で生きる、
極々平凡で、変わり映えしない、



何も無い、人生なんだと。








「九井くん、」






笑いかけて、話しかけてくるお前を、
突き放す気にも、ならなかったのは、



気まぐれだった。

ーー。→



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月兎(プロフ) - あぁもう涙…ほんと最高ですありがとうございます (2023年1月30日 6時) (レス) @page16 id: 720c1829f9 (このIDを非表示/違反報告)
愚民 - 笑いあり、涙あり。最高すぎます🤦‍♀️更新楽しみに待ってますッッ! (2022年7月20日 21時) (レス) @page20 id: 59cc64d62b (このIDを非表示/違反報告)
阿恵 - このお話の続きが見られて嬉しいです 更新頑張ってください (2021年9月16日 16時) (レス) id: f862afcdc8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ことり | 作成日時:2021年9月15日 14時

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