「やっと見つけた。」 ページ4
.
もし、恨むのなら、自分の優しさやお節介さだと思う。
あの出来事から1週間経ったあと、大学近くに止まっている車を見つめた。まるで私が出てくるということを分かっていたかのように、タイミングが合う。1週間ほど前に見た黄色、夜空のような瞳、淡い光。赤色に染ってしまった上着も、新しくしたのか破けたとこも無くなっていた。気にしていなかったけど、顔がいい。周りの子達が、なにあのかっこいい人!と騒いでいるのを聞きながらも、彼はこちらへと歩み寄る。私の手を掴み、口へと持っていき、貴族の挨拶のようにとされる。しかし、違いがあるとするならば、本来は唇は手に触れないはずなのに、彼の柔らかな唇が手に押し付けられた。
風楽「やっと見つけた、冴島Aちゃん。」
「なんで、名前、しって、」
風楽「僕に分からないことなんてないよ。……って言いたいとこだけど、僕の友達であり仲間がね、とーっても優秀なの。ほら、あそこに立ってるメガネかけるのが、君のことを調べてくれたわけ。」
「は、」
風楽「生年月日、身長体重、卒業した幼稚園から高校まで。親の生まれや家族構成。あとなんだろうな、でも、大体のことは知ってるよ、」
「な、んで、」
風楽「君が僕を助けてくれたから。誰もが素通りして、手を差し伸べることもないような、影の世界に君が手を差し伸べたんだよ。その責任、とってもわらなきゃ、僕困るな。」
この人は、何を言っているのだろうか。
ごくり、唾を飲み込む。名前なんて教えた記憶なんてない。彼の名前は覚えているけれど、それでもなんでっとすると、あそこって視線を向けた先を見つめた。メガネをした男性に、赤を身に纏う人、それから車に寄りかかりながらこちらを見つめる、紫色の彼。彼はあの時と同じく柔らかな笑みを浮かべていた。否、間違えたのは私だ。私は、踏み込んではいけなかったのだろう。あの路地裏の境目が境界線だったのだ。明らかなる裏の雰囲気、きっと彼はこっちの世界の人間ではない。表の人間ではない、というのを一瞬にて察する。瞳の奥に滲ませた色の感情は分からないが、少なくとも、間違えたのは私だ。
後悔なんて大嫌いだ。タラレバを零すぐらいなら、というそれは間違いでは無いのだけれど。今私は、とても後悔している。あの時、助けるんじゃなかったと。あの時、通り過ぎておけばよかったと。
眩しかったはずの黄色が、本当はくすんでいたなんて、誰がわかるって言うの。
これ、拉致ってことでいいですかね。→←チョコレートブラウンが僕を焦がす。
1130人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
そらの(プロフ) - すごく好きな作品です!更新頑張ってください! (2月12日 1時) (レス) @page28 id: 17ad6f88d5 (このIDを非表示/違反報告)
miyaana(プロフ) - パスワード解除ありがとうございます!ずっと待ってました!!! (2月8日 0時) (レス) id: dd83a370ce (このIDを非表示/違反報告)
さくらなぎ。(プロフ) - この作品めっちゃ好きです…kntくん供給少ないので助かりました…これからもずっと応援してます…!! (11月11日 23時) (レス) @page10 id: 2b648593bc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ことり | 作成日時:2023年11月11日 21時