だって私たち、人間ですから。 ページ22
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人間なんてそんなものだ、と話したとて、きっと君は笑いながら「そうだね、」と返すんだろうな。それだけを感じつつ、目の前のケーキを見て、目を輝かせているのを見ると、ほんとに分からないな、と思う。人なんて、よく分からない。その人だから分からない、とかじゃないんだ。多分、人間そのものが分からない。分かりたくもないけどさ。人の体温に触れなさすぎると、冷たくなるとは言うけれど、むしろ暖かすぎる。美味しそうに食べて、写真撮ってとする奏斗くんを見つめた。私の視線に気づいたのか、少し首を傾げた後に「どうかした?」と問いかけられるから、ふるふると首を横にふる。なんでもないよ、て言うように、ケーキを一口食べる。甘くて、甘くて、それがどうにも苦く感じたのは、なんでだろうか。毎日のようなお出掛けも、楽しいとさえ思うのに、抜け出せなくなりそう。
それが、嫌だったんだと思う、私。
ぬるま湯に浸かるように、泥沼に足を奪われるように。抜け出せなくなる感覚が、あまりにも強いから。隣にいて当たり前とか、これが普通になってしまうことが、きっと嫌だったんだと思うの。それを手放せなくなることが、何もかも、嫌だったのになぁ。そうやってぼんやりと考えて、ぎゅうって握るしかなくて。ケーキを1口、またひと口と食べていく。咀嚼して、飲み込んで。喉を通り、胃へと入り込むそれを感じつつも、きっと幸せだとか、このままがいいと言う願いさえも、ダメなんだと思った。
「美味しい?」
風楽「美味しいよ?」
「そ、」
風楽「…………美味しい?」
「ん?美味しいよ。ただ、最近ほんとに太った気がして、」
風楽「いや、細いまんまですがお嬢さん。」
「そう見えてるだけです、見せてるだけです。」
風楽「ほんとだよ。だって可愛いし、細いし。」
「良くないって、そーゆー事言うの。」
風楽「ほんとだし。」
「人たらしーーー。」
風楽「僕、誰にでも言わないんだけどな、」
甘く、君が笑っていた。
ごくり、唾を飲み込む。その甘さを飲み込むようにと、胸焼けしそうだから、アイスカフェラテを飲み込んで。苦味を帯びていたはずなのに、まるでガムシロを何個も入れてしまったかのように甘い。目を逸らして、飲み込んでの繰り返し。それに、じわっと汗ばむ体はきっと熱を帯びていたのだから。彼のペースに、ずっと前から振り回されている。
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そらの(プロフ) - すごく好きな作品です!更新頑張ってください! (2月12日 1時) (レス) @page28 id: 17ad6f88d5 (このIDを非表示/違反報告)
miyaana(プロフ) - パスワード解除ありがとうございます!ずっと待ってました!!! (2月8日 0時) (レス) id: dd83a370ce (このIDを非表示/違反報告)
さくらなぎ。(プロフ) - この作品めっちゃ好きです…kntくん供給少ないので助かりました…これからもずっと応援してます…!! (11月11日 23時) (レス) @page10 id: 2b648593bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ことり | 作成日時:2023年11月11日 21時