月に手を伸ばしても、届かぬように。 ページ11
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きっとあの人は、月なんだと思う。
おまえは何を言っているんだ、と思われてしまうが、きっと風楽さんは月なんだと思う。触れてはいけなくて、触れられないような人。あのまま寝てしまい、顔が死んでいる気がした。シャワーを浴びようと起き上がり、スマホで時間を確認しようとすれば連絡が来ていて。誰からだ、と寝起きの頭で画面を見下ろしたのなら、それは風楽さんからだった。時刻は夜中の3時で、微妙な時間に起きちゃったな、と思う。家に帰ったぐらいの時間が、確か21時あたりで。ぼんやりと思い出しながら、ずるずるとタオルと下着を取り出し、電気をつけて。スマホのロック画面を解除してからLimeを開く。
風楽[ いきなり連れ回してごめんね。 ]
風楽[ もう夜遅いから夜更かししないように！ ]
風楽[ おやすみ、Aちゃん。]
多分、というか、絶対。
風楽さんは悪い人では無いと思う。良い人だということだけは分かるし、それなりに気遣いのできる人だ。けれど、時折彼の瞳が濡れている気がした。そんな物理的な話ではなく、まるで哀色に染まっている感じがするから。なんというか、きっとこちらに柔らかく笑みを向ける癖して、触らせてくれないんだと思う。だから、私は彼のことを月なんだと思った。手を伸ばしても届くことのない、空高く浮かんでいる月。この時間に返信するのもあれかな？と思いつつも、おやすみなさいと一言だけ送る。窓から見える、月を見上げた。大きくて、けど遠くて、眩しく思えて。脳裏に刻み込まれた黄色を思い出す。
風呂場に行き、服を脱いでシャワーを浴びる。暖かなシャワーを浴びながら、思い出していた。もしかしたら明日なんか来ない可能性もあった。白いようなコートを靡かせて、夜空のような瞳を向けられて。どうにもこうにも、優しさを感じつつも、どこか冷酷さを滲み出していた気がする。よく分からないし、分かろうとも思わない。それでも、なんだか寂しさを感じてしまった。やめよう、難しい事考えるの。ちゃちゃっと出て、朝まで寝よう。お湯には浸かりたいけど今から沸かしても遅いしな、と思いつシャワーを済ませる。ドライヤー面倒だな、と思っていたのなら、ぴろんっと鳴り響いた通知音。視線をスマホへと向けたのなら、それは友達の密ちゃんからで。
密[ 拉致られ平気だったん？ ]
[ 平気、なんかお礼的な感じ。 ]
密[ ふーん、気をつけなね。 ]
[ あーい 。]
乾かして、寝よう。
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そらの(プロフ) - すごく好きな作品です！更新頑張ってください！ (2月12日 1時) (
レス) @page28 id: 17ad6f88d5 (このIDを非表示/違反報告)
miyaana(プロフ) - パスワード解除ありがとうございます！ずっと待ってました！！！ (2月8日 0時) (レス) id: dd83a370ce (このIDを非表示/違反報告)
さくらなぎ。(プロフ) - この作品めっちゃ好きです…kntくん供給少ないので助かりました…これからもずっと応援してます…！！ (11月11日 23時) (レス) @page10 id: 2b648593bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ことり
| 作成日時：2023年11月11日 21時
