最初から、君らに期待なんかしてないよ。 ページ35
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「寒いわ、やっぱり。今どきの女の子たちは、なぜこんな寒い中も、足を出そうと思えるんだろ。」
イブラヒム「やっぱ短いよ、お前のスカート。」
「だよね、知ってる。寒さに震えてる、今。ジャージ履こうかな、」
イブラヒム「ださ。」
「お前らに見られたくて足は出してねぇから。」
イブラヒム「最初から期待してねぇーみたいな言い方。」
「最初から、君らに期待なんかしてないよ。学校に来ることも、授業を受けることも、テストに出ることも。何言ってんの、ハナから期待してないんだけど。勘違いすんな、ばーか。」
イブラヒム「は、」
「ある程度の頑張りを見せたら、諦めてくれると思ったらさ。人間の心は存外変わるものである。おバカ、」
ヒューーーって、風が吹く。
それを聴きながら、足の寒さにやばそう、と思った。思うだけ、それ以上でもそれ以下でもない。きっと、これは毎年変わらないことなんだろうな、と思う。透明な風が、私たちを冷やしていく。はぁー、と息を吐き出し手を暖めながらも、きっと逃れることもない。どこまで行っても追いかけるようにと、ついてまわる呪いのようにと。ほんとに、君らに見られるために足を出してる訳でもない。それを勘違いしないでいただきたい。何を言ってるんだ、というような言い方で、少し後ろを歩くイブラヒムくんに振り返って吐き捨てた。最初から、期待なんかしてない。君らに期待するだけ無駄だもの。それなのに、展開は私の予想を遥かこえていく。
起承転結の、転がこの物語に存在しているとは不思議だなぁと思ってしまう。ゆらゆらと揺れ動く心情を見つめているだけ。それに触れることも無く、きっと何も言わずにいるのが私だ。風が、イブラヒムくんのピアスを揺らす。ちゃりっ、と金属音が擦れる音が響いたのを感じる。車の音や、殿舎、人々の声に、ガヤガヤとした喧騒。それから私たちは切り離されたような静寂の世界に閉じ込められている。まるで、アラジンの砂時計に閉じ込められたジャスミンのように。何を期待しているの、と吐き捨てたはずなのに、まるで鎖が切れたかのようにと、彼は目を見開いていた。
その双眸があまりにも、綺麗な色をしていて、尚且つまるで別の感情が揺らぐ。
イブラヒム「はー………、ははっ、マジでお前、分かんねぇーわ。」
「何の話かな、わからんよ。」
イブラヒム「分からんでいいよ。」
case 23 / 輝いた銀色。→←終わりの先なんて存在しません。
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あさき(プロフ) - 完結ほんとにおめでとうございます!!!!他の作品もぜひぜひ!応援させていただきます!! (11月18日 19時) (レス) @page50 id: 2e9509526a (このIDを非表示/違反報告)
ぴ(プロフ) - 完結おめでとうございます。恋愛の描写もすごく面白かったけれど、それ以上に主人公の考え方が興味深くて読んでてとても楽しかったです。ことりさんの作品は恋愛だけじゃないところが好きです。とても面白い作品をありがとうございました。 (11月17日 1時) (レス) @page50 id: bab803b5e4 (このIDを非表示/違反報告)
ty. - 完結おめでとうございます!毎日毎日更新楽しみにしてました、次回作待ってます!! (11月16日 23時) (レス) @page50 id: 6fcf6de5f3 (このIDを非表示/違反報告)
さつき(プロフ) - 完結おめでとうございます!通知が来る度ウキウキして、読んだらいつも幸せでした。ことりさんの作品本当に大好きです。また素敵な作品をお願いします!影ながら応援させていただきます! (11月16日 23時) (レス) @page50 id: 039532f02f (このIDを非表示/違反報告)
の〜さん(旧もこ)(プロフ) - コメント失礼します。私2j3jの人達全員推しなのと逆ハー大好物なので嬉しいです!出来たら全員に恋愛的に愛されたいです。無理ならすみません。更新頑張ってください。楽しみにしてます。 (10月30日 18時) (レス) @page27 id: 79dfdf41ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ことり | 作成日時:2023年9月20日 22時