case 22 / 淡く滲んだ紫色。 ページ27
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不破 side
人が恋に落ちる瞬間を、誰よりも知ってるつもりだった。
けど、二度目だ。多分きっと、恋がなんなのかとか。愛が何なのか、とか。まだ少しわからん時やなくて、ちゃんとわかった上で、人を好きになる感覚は、二度目だ。それを感じながら、キラキラと輝いて見えたいたから。隣に立ちたいとか、並んで歩きたいとか。また出てしまう欲望が、胸の内を焦がしていく。馬鹿だと思った、変だと、おかしいんだと。それさえも、愛おしくなる。保健室のベッドに押し倒しても、顔を変えることなく、俺を見上げるAちゃん。恥ずかしがる素振りもなく、何の反応も示さなさい。手首に力を込める。跡になってしまうかもしれないと思った。綺麗な白色の肌に、鈍いような色をのせてしまうと。
それが、いいと思った。
その方がいいと、思ってしまった。
宿してしまったその感情の色は、明白だったのだろう。
不破「おれね、坂城杏梨ちゃんを見た時、似とるなぁ思ったんよ、おれと。」
「そ、」
不破「親近感っちゅーのかな、わからんけど。でも、多分、そーゆー感情やったと思う、今更やけど。」
「それで?」
不破「や、特になんかある〜とかやないんですけどもね。でも、………どしよ、言いたいこと纏まらん。おれ、Aちゃんの隣、胸張って歩けるようなるから、見といて。」
「…………はは、あんたらに期待なんかしてないよ、ばか。」
不破「んはは、その方が気が楽で、ええね。」
その子は、俺の欲しい言葉を沢山くれるから。
期待してない、という言葉が、どれほどまでに俺の心を締め付けるだろうか。そうか、期待されてないか、それならいいやって思うこの気持ちに、嘘は無いから。ぽすり、肩に顔を埋める。ぎゅうっと抱きしめたのならば、まるで小さな子供をあやす様ににと、背中を叩かれる。とんっ、とんっ、と規則性のあるメトロノームのようにと、寝かしつけるかのように。それが、あまりにも心地が良かった。ぐりぐり、と顔を押し付けたのならば「痛いんだけど。」と言われてしまう。それに、ふはっと笑い出して顔を上げて。擦り付けたおでこが赤くなっていたのか、手を伸ばされ撫でられる。
それが、心地よかった。だから、それに甘えることにしたんだ、俺は。
俺は、その感情の名前をずっと、誰よりも、知ってたから。すとん、納得することが沢山。ほんまに、馬鹿みたいやねぇ。
骨が軋むまで抱きしめたら折れるに決まってんだろうが。→←力なく笑って見せて。
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あさき(プロフ) - 完結ほんとにおめでとうございます!!!!他の作品もぜひぜひ!応援させていただきます!! (11月18日 19時) (レス) @page50 id: 2e9509526a (このIDを非表示/違反報告)
ぴ(プロフ) - 完結おめでとうございます。恋愛の描写もすごく面白かったけれど、それ以上に主人公の考え方が興味深くて読んでてとても楽しかったです。ことりさんの作品は恋愛だけじゃないところが好きです。とても面白い作品をありがとうございました。 (11月17日 1時) (レス) @page50 id: bab803b5e4 (このIDを非表示/違反報告)
ty. - 完結おめでとうございます!毎日毎日更新楽しみにしてました、次回作待ってます!! (11月16日 23時) (レス) @page50 id: 6fcf6de5f3 (このIDを非表示/違反報告)
さつき(プロフ) - 完結おめでとうございます!通知が来る度ウキウキして、読んだらいつも幸せでした。ことりさんの作品本当に大好きです。また素敵な作品をお願いします!影ながら応援させていただきます! (11月16日 23時) (レス) @page50 id: 039532f02f (このIDを非表示/違反報告)
の〜さん(旧もこ)(プロフ) - コメント失礼します。私2j3jの人達全員推しなのと逆ハー大好物なので嬉しいです!出来たら全員に恋愛的に愛されたいです。無理ならすみません。更新頑張ってください。楽しみにしてます。 (10月30日 18時) (レス) @page27 id: 79dfdf41ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ことり | 作成日時:2023年9月20日 22時