力なく笑って見せて。 ページ26
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不破「あんま無茶せんで。」
「お前が言うのか。」
不破「ほんまに言うとる。」
「なんでよ、大袈裟な。」
不破「Aちゃん、」
「…………不破くんって、怒ることあるんだ。」
不破「ぅ、あ、今のはちゃうくて。でも、ほんまに、無茶というか。俺なんかに身体張らんでええよ。どうにかするし、今までだって、どうにかしてきたし。」
「馬鹿だねぇ。お前なんかのためじゃないよ、最初から。」
不破「は、」
「いつだって私のために決まってんでしょ。勘違いすんな、ばーか。」
消毒液の、鼻をツーンとかすめ取る匂いが、あまりにも苦しかった気がした。頬に添えられる、冷やすやつ。なんて名前だっけな、忘れちゃった。夕焼け空がやけに眩しく感じながら、目の前に椅子に座りながら、申し訳なさそうな顔をする不破くん。低い声だと思った。お気楽な、明るいような声のトーンなんて、どこにも存在していなかった。ただただ、苦しいだけの声を響かせていた気がした。私を見つめる瞳には、きっと怒りを宿していただろうに。だから怒るんだね、と言ってやるの。気づいて、慌てて、違うと否定して、取り繕うような姿を見て既視感を感じる。嗚呼、そうか、そうなんだね、不破くん。
あなたは、坂城さんに自分を重ねていたのでしょう?相手によって取り繕うのを変えて、笑って流して、だからこそ助けてあげれなかったと勝手に傷ついていたの。ほんとに、馬鹿な人。それをぼんやりと考えながら、自分なんかのためにの言葉に、はぁ?としてしまった。あんたのためじゃないんですけど、自惚れるなと吐き出そうとしたけど、少しだけ言い方に気をつけて。私のためにしてること。ムカつくから、見てて。だから助けた、それの何が悪いって言うの?そんなことを考えながらも、頬を冷やすやつを抑え込む手を、やんわりと退かしていた。目線を逸らしては、きっと私は彼に馬鹿だと言いたかったのかもしれない。そんなの、分からないよ、私も。
「私も、周りも、案外何も考えてないよ。」
不破「そうね、」
「それに、自分のことを自分で、なんかっていうのは辞めな。」
不破「んぇ?」
「世界中が敵になったその時でも、自分のこと認めれるのも、愛するのも、自分だけなんだから。じゃあね、また明日。」
腕を引っ張られる。
宙を舞うような感覚になりながら、ぽすり、気づけばベッドに押さえつけられていたのを、今理解した。
case 22 / 淡く滲んだ紫色。→←その痛みをどうか、忘れないでいて。
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あさき(プロフ) - 完結ほんとにおめでとうございます!!!!他の作品もぜひぜひ!応援させていただきます!! (11月18日 19時) (レス) @page50 id: 2e9509526a (このIDを非表示/違反報告)
ぴ(プロフ) - 完結おめでとうございます。恋愛の描写もすごく面白かったけれど、それ以上に主人公の考え方が興味深くて読んでてとても楽しかったです。ことりさんの作品は恋愛だけじゃないところが好きです。とても面白い作品をありがとうございました。 (11月17日 1時) (レス) @page50 id: bab803b5e4 (このIDを非表示/違反報告)
ty. - 完結おめでとうございます!毎日毎日更新楽しみにしてました、次回作待ってます!! (11月16日 23時) (レス) @page50 id: 6fcf6de5f3 (このIDを非表示/違反報告)
さつき(プロフ) - 完結おめでとうございます!通知が来る度ウキウキして、読んだらいつも幸せでした。ことりさんの作品本当に大好きです。また素敵な作品をお願いします!影ながら応援させていただきます! (11月16日 23時) (レス) @page50 id: 039532f02f (このIDを非表示/違反報告)
の〜さん(旧もこ)(プロフ) - コメント失礼します。私2j3jの人達全員推しなのと逆ハー大好物なので嬉しいです!出来たら全員に恋愛的に愛されたいです。無理ならすみません。更新頑張ってください。楽しみにしてます。 (10月30日 18時) (レス) @page27 id: 79dfdf41ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ことり | 作成日時:2023年9月20日 22時