case 21 / 焦がれる灰色。 ページ19
.
葛葉 side
焼けるような、感覚がする。
呼吸の仕方を忘れたのだろうか。
頬に熱を帯びていた。
たまたま聞いてしまっただけだった。他クラスの、話を。杏梨が属していたグループが影で、「槙野マジで許せねぇ。」だの「痛い目見してやんねぇーとわかんねぇよアイツ。」と言ったような言葉。ぴたり、足を止めて、視線を揺らす。夕焼けに染まりつつある放課後の教室での出来事だった。別に、なんとも思っていなかった。けれど、懸命に手を伸ばし、振り払われようとも食らいつこうとするアイツの姿が脳裏に浮かぶ。守りたいだなんて思うこともないように、きっと何度も吐き出されたのは毒なのに。守れるかもしれないと過信していた。実際に喧嘩なんてしたこともないが、叶からよく聞かされていたから。「人間はね、案外弱いんだよ。よく顔殴ってるの見るけど、あれはダメ。弱いのはね、ここ、みぞおちと〜………。あと、顎。ね、簡単でしょ?」と笑っていたのを思い出す。
よくよく考えてみれば、素行不良と出席もしてないオレたちと、喧嘩ばかりしながらも出席をしてた叶たちでは、諸々違うのだろうか。なんでそうしたのか、という問いかけにはきっと答えられやしない。手のひらが、拳が赤く染まるのを見つめるだけだった。横たわり、呻き声を出しているのを聞いていたのならば、足音と扉の開く音。振り返れば、息を切らしながらこちらを見つめる槙野Aがそこにいた。手を伸ばされ、頬を叩かれ胸ぐらを掴まれる。泣きそうな顔をしながら、並べられた言葉に、理解しようと脳が動こうとする。けど、違う、違った、違うんだとわかる。
目の前がスパークする。
焦がれてしまったのだろう、きっと。
喉が、乾くようにと、求めてしまうそうになる。
葛葉「なんも、されてねぇ?」
「お陰様で。」
葛葉「泣くなって。」
「泣いてない!」
葛葉「悪かったよ、」
「思ってないくせに。」
葛葉「バレたか。」
「ムカつく、ずっと、ずっとムカつく。」
葛葉「ずっとムカついとけよ。」
だから、オレらのこと、オレのこと、忘れないでずっとそのまんま覚えとけ、馬鹿。錆び付いていたような鍵が、ゆっくりと開けられていく。ぽろぽろと泣きながら、きっと自分のせいだと思っているのを見る度に、馬鹿なヤツと思ってしまう。なんとも思ってないくせに、と考えながらも、お前が泣く理由がオレであればいいと願うこの気持ちに、答えなんてないと思いたかった。
人という生き物は、きっかけがあれば変わることの出来る生き物である。→←ぶん殴って、愛。
1635人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あさき(プロフ) - 完結ほんとにおめでとうございます!!!!他の作品もぜひぜひ!応援させていただきます!! (11月18日 19時) (レス) @page50 id: 2e9509526a (このIDを非表示/違反報告)
ぴ(プロフ) - 完結おめでとうございます。恋愛の描写もすごく面白かったけれど、それ以上に主人公の考え方が興味深くて読んでてとても楽しかったです。ことりさんの作品は恋愛だけじゃないところが好きです。とても面白い作品をありがとうございました。 (11月17日 1時) (レス) @page50 id: bab803b5e4 (このIDを非表示/違反報告)
ty. - 完結おめでとうございます!毎日毎日更新楽しみにしてました、次回作待ってます!! (11月16日 23時) (レス) @page50 id: 6fcf6de5f3 (このIDを非表示/違反報告)
さつき(プロフ) - 完結おめでとうございます!通知が来る度ウキウキして、読んだらいつも幸せでした。ことりさんの作品本当に大好きです。また素敵な作品をお願いします!影ながら応援させていただきます! (11月16日 23時) (レス) @page50 id: 039532f02f (このIDを非表示/違反報告)
の〜さん(旧もこ)(プロフ) - コメント失礼します。私2j3jの人達全員推しなのと逆ハー大好物なので嬉しいです!出来たら全員に恋愛的に愛されたいです。無理ならすみません。更新頑張ってください。楽しみにしてます。 (10月30日 18時) (レス) @page27 id: 79dfdf41ef (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ことり | 作成日時:2023年9月20日 22時