何か言ってあげればよかったかな。 ページ2
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ローレンくんは私を見下ろした後に、手首を掴んでは、まるでここから抜け出すようにと、歩き始めていた。ばさばさ、と腕の中にあったはずの道具が床に落ちながらも、まるで何も無かったようにと、教室から飛び出す。え、え?としながら、廊下を歩いては、そのまんままるで裏口のようにと、校舎裏へと出る羽目になる。腕は掴まれたままで、男の力に勝てるわけもないだろうに。そのあとに、壁を殴っては、そのまま頭を抱えながら座り込むローレンくん。何を見せられてるんだ、と思いながらも、壁を殴ったあとの拳が、どうにも痛々しかった。手を伸ばして、ハンカチで拭いて、絆創膏あったかなと思いながら、ポケットを探ってもティッシュしかなくて。
これ、サボる羽目になりそうと思っていた時には遅く、手を伸ばされては抱きしめられる。ぐりぐり、と肩に顔を押し付けられて、なにか言おうとしても、言わないでといいだけな力強さに、息をするだけにした。沈黙、沈黙、────── 呼吸のみ。
その呼吸が、どうにも悲しそうだった。ふざけるなという怒りとか、悲しいとか、なんでこうなんのっていう気持ちとかがわかって、苦しくなって。君たちはほんとに馬鹿な男だねぇ、と笑いながら言ってやりたかったのだけど、私は優しい女だから言わずに頭を撫でてあげたのならば、ぴくりと反応する身体。おもしろ、と思っていた数分後に離れていくから、泣きそうな顔をしているローレンくんを見る。そんな顔するなら、辞めちゃえばいいのになんて言うのは、私の考えなのだろう。ポケットに手を入れて、タバコを取りだし火を灯す。ここは、彼の喫煙スポット。今更の話だろう。
ローレン「知ってたん、帰ってくるって。」
「噂でね、ほんとかは知らなかった。」
ローレン「馬鹿だって思うでしょ、」
「単純すぎ。」
ローレン「はは、そうね。」
「葛葉くんとかもうダメやん。」
ローレン「………酷いこと、言われたし、されたとは思うけどさ。」
「ん?」
ローレン「俺、杏梨ちゃんが笑って楽しそうだったの、嘘じゃねぇーって思いたいんだよ。これも、馬鹿かなぁ、」
吸い込んで、吐き出す。
それを繰り返しているのを見つめながら、鼻を掠めるタバコの匂い。力なく笑って、弱々しい声を出すローレンくんの言葉を聴きながらも、なんて返すのが正解か分からなかった。何か言ってあげれば、良かったのかな。
サボりたくてサボったわけじゃない。→←捨てきれなかった恋心たち。
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あさき(プロフ) - 完結ほんとにおめでとうございます!!!!他の作品もぜひぜひ!応援させていただきます!! (11月18日 19時) (レス) @page50 id: 2e9509526a (このIDを非表示/違反報告)
ぴ(プロフ) - 完結おめでとうございます。恋愛の描写もすごく面白かったけれど、それ以上に主人公の考え方が興味深くて読んでてとても楽しかったです。ことりさんの作品は恋愛だけじゃないところが好きです。とても面白い作品をありがとうございました。 (11月17日 1時) (レス) @page50 id: bab803b5e4 (このIDを非表示/違反報告)
ty. - 完結おめでとうございます!毎日毎日更新楽しみにしてました、次回作待ってます!! (11月16日 23時) (レス) @page50 id: 6fcf6de5f3 (このIDを非表示/違反報告)
さつき(プロフ) - 完結おめでとうございます!通知が来る度ウキウキして、読んだらいつも幸せでした。ことりさんの作品本当に大好きです。また素敵な作品をお願いします!影ながら応援させていただきます! (11月16日 23時) (レス) @page50 id: 039532f02f (このIDを非表示/違反報告)
の〜さん(旧もこ)(プロフ) - コメント失礼します。私2j3jの人達全員推しなのと逆ハー大好物なので嬉しいです!出来たら全員に恋愛的に愛されたいです。無理ならすみません。更新頑張ってください。楽しみにしてます。 (10月30日 18時) (レス) @page27 id: 79dfdf41ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ことり | 作成日時:2023年9月20日 22時