土属性の魔法学生は平穏に暮らしたい。 (ページ22)

今日:36 hit、昨日:23 hit、合計:67,857 hit

十年前、全ての出会い。ページ22

.

叶 side

今から十年前、自分たちは魔法が扱えることを知った。だから、この学校に行くことも決まっていた。特にこれといって得意な魔法がある訳でもなく、それなりに普通程度だけど魔法が使えた程度。いつも通り、全部いつも通りだった。木の枝を使って、魔法使いごっこをして。夢を語って、どっちが先に魔法省で偉くなるか競走しようって約束をした。それだけで十分だった、それだけど、僕ら人間という生き物は欲張りだったんだ。欲に、溺れたのは紛れもない幼い頃の僕らだ。

実態はなかった、声だけが響いていた。いつも通り、魔法使いごっこをしたり、本を読んで魔法を学んでいた時に、僕らはふたつの魔法と出会う。意思のある魔法、それが聖魔法と闇魔法だった。伝説や奇跡だと言われていたその魔法に、目を輝かせたのも僕らだった。馬鹿だと思ったよ、そんな話あるわけないって。馬鹿だと、実力で勝負するべきなんだと、僕らも考えていた。けど、子供の欲というものは、存外何を仕出かすか、分からなかったんだ。

叶｢くずは、ほんにかいてあったやつだよ。せいまほーと、やみまほー。｣

葛葉｢おれらしかきこえねぇーんかな？｣

叶｢わかんない、でもなんか、かなしそー。けーやくまほーで、なんとかできるかも？｣

葛葉｢ふーん？ものはためし、ってやつ？｣

叶｢そう、ものはためし！！｣

それが過ちだった、それが間違いだった。
頭の中へと染み込むような声。助けて欲しい、少しだけ身体をどうか、と頼まれるから、それに無垢な僕らは疑うことも無く、手を差し伸べる。それが当たり前だと思っていたから。契約内容は簡単なものだった。僕らに魔法の力を借りる代わりに、満月の日だけ身体を自由に使うという無いよう。それが僕らの手首につけられた契約魔法の内容。満月の日、契約通り身体を貸した時に、あの事件は起きた。◆◆◆市の消失が。

.
.
.

叶｢それが、僕らの罪だし、過去だよ。今では、満月の日になっても、聖魔法も闇魔法も、身体を使ったりはしてなくて、｣

｢でも、契約魔法がある限り、聖魔法も闇魔法も、先輩方の魔法ではない、ってことっすよね。｣

葛葉｢そ、れは、｣

｢なら、危険視は免れないんじゃないですか。まだ契約状態って言うなら、聖魔法と闇魔法には意思が存在し、故意的に◆◆◆市を消滅させた、違います？｣

この子は、どうしてズケズケと、境界線を飛び越えてくるのだろう。