土属性の魔法学生は平穏に暮らしたい。 (ページ14)

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あの日、オレらは希望を抱くことさえ辞めた。ページ14

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葛葉 side

葛葉｢にしても、まさかあそこまで魔法使わないって、なんなんかね。｣

叶｢なにか事情があるんだよ、僕らみたいに。｣

叶は、オレやローレンたち以外との生徒と、極力関わらないようにとしている。それは、差を感じているのか、それともあの日の罪悪感か。今から十年前、オレと叶はとある市を記録や記憶から消滅させてしまった。魔法の暴発というのか、それとも単純なる好奇心からなのか、そこら辺は曖昧でぐちゃぐちゃだけど。魔法省はその事実さえも隠した。聖魔法と闇魔法についてのことを、秘密にしようとしていたのだろう。魔法に選ばれたのがオレと叶だった。それをどうにもうるさいと、黙れよと吐き出したかった。この学校に保護されている間も、その話は出てくる。選ばれたふたりだ、というように。

篠原Aは至極普通な土属性魔法の生徒である。だから、こんなやつならすぐに中級魔法を扱えるのに、それをしていないし、確かめるようにオレたちを見る。めんどくせぇーけど、叶に害があるかもしれないと影に隠れて、2年生の談話室までついていけば、話していたのはあの事だった。オレをどこまでも縛り付ける呪いだった。こいつは違うと思った訳では無いが、少しだけ他と違うやつだな、と思って。もしかしたらこっち側の人間なのか、と思ってたのに。オレらのアレを罪というのであれば、幼き心はいつまでも救われないことだろう。

救われたいわけじゃない。

助けて欲しいわけじゃない。

罪悪感から逃げたいわけでもない。

ただ、期待だけはさせないでほしい。

葛葉｢叶、｣

叶｢おかえり、どこ行ってたの？｣

葛葉｢もし、あの日のことを知ってるヤツがいるって言ったら、お前はどうする？｣

叶｢…………Aちゃんのことでしょ。やっぱりかぁ、どうやって知ったか教えてもらいたいかな〜。でも、素直に教えてくれる訳でもないでしょ。｣

葛葉｢そーだな、｣

叶｢んふふ、気に入っちゃったの？あの子のこと、｣

葛葉｢ちげーよ、ただ、｣

オレの本能が、これ以上篠原Aと関わってはいけない気がしていた。もっと、でけぇーモンとの関わりがあって、何かに巻き込まれる予感がしていたから。それは、オレのただの勘なだけだけど。少なくとも、何かあっても叶だけは守れるようにしねぇと。右手首に刻まれた、ブレスレットのような模様を、オレは見下ろしていた。