誤魔化すべきじゃなかったよなぁ。 ページ8
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イブラヒム side
誤魔化すんじゃなかったな、て後悔していた。高校2年生になってそれなりに経って、隣に変わらずにいるそいつを何時までも見つめている。飲みかけのジュースを勝手に飲んでもなんの反応もしないし、少し手が触れたって、抓ってくるようなほど。男として意識されてないことは明白だった。出会いは高一の時、たまたま席が近かったのもあって普通に喋りかけてきた。趣味が合うとか、好みが似てるとかそんなんじゃない。多分、話しかけられなかったら一生関わることなんてないような人種、て感じ。明るいようにと笑って、子供みたいに反応して。なんだかなぁ、て思いながら隣を歩いてた俺が馬鹿だった、とその時は思ってなかったから。隣にいるのが当たり前、飲みかけのジュースを訳っ子するのも当たり前。こいつの特別である自覚をしながら、その特別は多分、ほんとーの特別なんかじゃないって気づいた。
はぁ、とため息を吐き出しながら、ずごごっと紙パックジュースを飲み干す。目の前で、きょとんっとした顔をするバンドのメンバー。ひばあたりとか、悩みですか!?みたいな反応で、こいつは分かってないんだな、てことを考えていた。フワミネイトに「Aちゃんとなんかあった?」て問いかけに、んーってテキトーな反応をして。ローレンに「まさか告った、とか?」て言葉に、ピタッと止まってしまう。やば、今のわかり易すぎたか、て感じ。もし、後悔していることがあるとするなら、俺は朝のことだと言うしかない。その気ある、って言ったらみたいなことを、思わず口から滑らせてしまった。言うつもりは、なかった。せめて、せめて卒業するまでは、アイツの望む男友達:イブラヒムで居てやろう、て思ってたのにて気持ち。
イブラヒム「ま、意識なんかされてなかったけどね。」
不破「え、まーーじ?」
イブラヒム「大まじ。なんなら、そーゆージョーダン嫌い、て言われた。」
ローレン「誤魔化したん?」
イブラヒム「思わずね。」
渡会「え、イブさんAさんのこと好きなんですか!?」
不破「1年の頃から有名な話よ、これでも。」
イブラヒム「まーね、誤魔化した俺が悪いとかはあるんだけどさ。」
お昼休み、屋上手前の踊り場。そこに集まってパンとか食べながら、そんな話。別に、知られたくないわけじゃないけど、あんなにも怯えた顔をされるとは思わなかった。どーしよ、踏み込みにくくなっちゃったな、てそんなことばっか考えてた。
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作者名:ことり | 作成日時:2024年2月8日 22時