「好きな人とかいないの。」 ページ15
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それもそうだよね、て言えばよかったのかな。
そんなことを授業中に考えながらも、きっと答えなんて出ないんだろうな、て思った。嫌か、て言われたら嫌だと答えるぐらいには。なんで、って、イブの一番がいいから。友達としての一番でいたいから。彼女が出来たら、一番にはいられない。それが嫌なんだろーなー、って感じ。イブは、なんだかんだ私の我儘を聞いてくれし、なんだかんだ面倒みもいいしで、楽。午後の授業の眠たさを感じつつも、右斜め前に座るイブの背中を見つめる。背もたれに力を預けていて、机の下でスマホを触っていた。けど、ちゃんと板書をしてからとか、問題を解き終わってからだから、器用なやつって思う。授業の流れが遅く感じつつも、ようやく終わりを迎えて、掃除の時間になる。テキトーな感じの分配で、私とイブは別館の廊下掃除。もちろん他のクラスメイトたちもだけど。
「イブってさ、好きな人とかいないの。」
イブラヒム「なに、きゅーに。恋バナ?」
「気になっただけ。もしかしたら私が邪魔してるのかな、って。」
イブラヒム「あーね。」
「どうなの、いるの。」
イブラヒム「お前には言わねぇーわ。」
「なんでよ。」
イブラヒム「口軽そう。」
「はぁ?」
お昼の言葉を思い出したようにと、問いかけてみせる。箒で廊下を掃きながら、イブの方を見ないで。だるそうな声を聞きつつも、言わないって言われちゃったけど。なんでよ、私そこまで口なんか軽くないのに。それにムカつきながらも、チリトリでゴミを取った後にゴミ箱に捨てた。道具を掃除用具の入ったロッカーに入れて、手を洗う。ハンカチで手を拭いたあとに、イブを見た。艶めかしい褐色肌と銀色の髪が、少しだけ陽の光に当たる。思わず、綺麗だなって思ってしまったんだ。ぼーっ、て見つめていれば、デコピンをされるからそれに意識を持っていかれる。「見すぎ、」てからかうように少し笑って言われるから、うるさいなぁて思っちゃって。
正直な話をすると、イブは普通にかっこいい。顔だっていいし、温泉経営してる実家だから、家も太い。おまけに面倒みだってなんだかんだいい、だからこそ、そんな彼が惚れる人ってどんな人なんだろ、て思ってしまった。やっぱりお姉さん系とかなのかな、それとも年下とか?秘密の関係とか、なんて勝手に考えていた。それでもな、やっぱり嫌だと思ってしまう。関係生や、優先順位が変わるのが、なんて、欲張り娘だ、私。
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作者名:ことり | 作成日時:2024年2月8日 22時