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別室に入ると
湯気の立ちこもった食膳が用意されている
ご飯、味噌汁、
おばんざいは茄子の揚げ浸しや
大根と厚揚げのたいたん
そしてメインは鮭の塩焼きのようだ
「たまには
人様に作ってもらうのも良いわね」
本邸ではすっかり妻の口ぶりで
五条に向かってそう話す
「僕基本作らないからわからないよ」
＿＿帰ってもAが作るし
そう話す彼にそうね、と笑った
「ところでA。
本当に良いんだよね？」
ぴく、と彼女が反応する
＿＿＿それは一月前の話だ
「……A」
「はい？」
「そろそろ結納しよっか」
五条から出た言葉に
昼食の準備をしていたAは
一瞬動きを止める
「え…？」
今なんていった？
と言わんばかりに聞き返すと
五条は「結納」ともう一度繰り返した
「本当は去年だったはずの所を
何かと理由をつけて
先送りにしてたのに？」
彼女はそう続ける
「あれはほんとに
任務が立て続けにあったから
余裕なかったんでしょ」
悪いと思ってるよ、と
彼女の額に唇を落とすが
“作ってるので退いてください”
と返された
「準備もあるし
六月にしようかなって思うんだけど」
彼女の反応はいつものことなので
五条は特に反応を示さずにそう告げる
話しながらも
彼は流れるようにして
Aが作り終えたものから
ダイニングテーブルに持っていった
「……わかりました」
「何を意味するか
分かってるんだよね？」
五条の言葉から少しの間があいて
「三年前、私は失敗したんです。
もう…貴方にお任せしないと」
と彼女から返答が来る
＿＿まな板や包丁、
菜箸を洗いながらの為
視線を伏せているのか
＿＿それとも躊躇いがあって
視線を伏せているのかは
分からない
「……ほんとに？」
「それが約束でしたから」
最後に自身の手を洗い
タオルで拭くと
Aは次にエプロンを外した
それを壁に掛けたと同時に
五条が背後から包み込む
「後悔しない？」
静かに降りかかる言葉に
Aは優しく告げた
「……貴方が“大丈夫だ”というのなら」
「僕にかかってんの？」
その問いかけにハイと答えながら
Aが五条の手に添える
「貴方がすると決めたものになら
全てに従います。
それが
貴方を道連れにした私が出来る
唯一の事だわ」
＿＿＿＿＿
＿
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