14.誘い込まれて ページ18
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「五条、先輩…?」
後ろからでははっきり確認できないけれど、持っていたライトの光を手で覆い隠しながら、真剣な瞳で暗闇の奥を見つめる。
「……気づかない?まだ…」
「え…?」
五条先輩の言葉に虎杖くんと顔を見合わせる。と、彼の後ろを見て気づいた。
「え……さっきの、竹…?」
「へ?」
「気づいたか…」
私の瞳に映ったのは、虎杖くんと同じ背丈ぐらいの竹。
そう、気づいたんだ。
この竹はさっきも"見た"。
「五条先輩、これ……」
「はぁ………見事に誘い込まれたって訳か」
その竹から視線を逸らさず五条先輩に声を掛ければ、面倒くさそうなため息が聞こえる。
未だ状況が分かっていない虎杖くんを他所に、五条先輩が振り返る。
「2人とも、手、繋いでて」
「え゙」
「いいから」
照れたのか、暗闇でもわかるぐらい耳を真っ赤にさせた虎杖くんが、おずおずと私に左手を差し出す。
「良いか、何があっても絶対その手、離すなよ」
「は、い」
五条先輩の声に力強く頷いて、虎杖くんの手を握る。
「悪い、俺と手ぇ繋ぐことになって…伏黒とかの方が、良かったよな…」
五条先輩が私たちが見える範囲で辺りを見ている最中に虎杖くんがそう呟く。
「えっ…と、」
申し訳なさそうに眉を8の字に下げてそう言う虎杖くんに、苦笑いを浮かべながら「大丈夫だよ」と声をかける。
「別に、そういう仲なわけではないし、緊急事態だから、大丈夫」
ね?と笑いかければ、それもそうか、と渋々納得してくれる虎杖くん。
先程まで動き回っていた五条先輩が動きを止めてこちらを振り返る。
「特にここら辺に何かがあるってわけじゃないけど、ナニカが俺らをここに誘い込んだのは間違いじゃない……とにかく、今はどうすることも出来ないから、連絡を取れればとろう」
「了解です」
五条先輩の真剣な横顔に頷いて、携帯を取り出す。
電波が立っていることを確認して、恵に連絡をする。
スピーカーにした携帯から、プルルルル…プルルルル…というコール音がそれなりの音量で流れたあと、相手が電話をとる音が聞こえたかと思うと。
《ごごごゴ ごごご ゴごにぃ゙ぃ゙ぃ゙ はぁ゙ァ゙ぁ゙ぁ゙ い゙ぃ゙ィぃぃる゙なぁ゙ぁぁ》
「!?!?」
明らかに恵の声ではないナニカが、この林へ入ってきた私たちを拒むかのような言葉を発した。
………
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ささまめ。(プロフ) - 華さん» ありがとうございます、! (2020年1月26日 16時) (レス) id: 953be4ace3 (このIDを非表示/違反報告)
華 - 更新頑張ってください! (2020年1月25日 15時) (レス) id: 8325108de9 (このIDを非表示/違反報告)
ささまめ。(プロフ) - 咲さん» わー!嬉しいお言葉ありがとうございます!!そのお言葉を糧に頑張って更新していきますねー!! (2020年1月7日 11時) (レス) id: 953be4ace3 (このIDを非表示/違反報告)
咲 - すごく面白いです!これからもがんばってください (2020年1月6日 22時) (レス) id: a96e485a5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ささまめ。 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/sakuhi/
作成日時:2019年8月29日 21時