7. Myside ページ7
.
ようやく絞り出した言葉は、傑に拾われることなく雑踏に飲み込まれた。
私に背を向けて去っていく姿は、信じたくなかった現実を、自分が置いていかれたという事実を突きつけてきた。
無言で私の手を引く悟に、時折転びそうになりながら着いていく。
掴まれた左手首が痛かったけれど、そんなことはもうどうでも良かった。
ベッドに放り投げられて、傑にしか見せたことのない身体を晒す。
嫌だという感情は湧かなかった。
行為に及ぶことで少しだけでも現実から意識が逸れるのなら、もう何でも良かった。
「……、」
こちらに背を向けた悟が、何かを言いかけてやめたのが分かった。
耐えられなくなって、少し火照った悟の背中に擦り寄る。
何の感情も湧かなかったし、表情もどこかに忘れてきてしまったみたいだった。
…それでも、人肌に触れていなければ、壊れてしまった何かを2度と取り戻すことができないような感覚に襲われて、長いこと悟の背中に触れていた。
—— いっそそのまま壊れてしまおうか、いや、いつか傑が帰ってくるかもしれないし、でも傑は死刑対象だし
ぐるぐると、思考はまとまらなかった。
491人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
せつな - chiroru...さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです。他作に比べ勢いで書いてしまっている節があり、読みづらいところがあるかもしれませんが、これからも読んでいただけると嬉しいです! (10月2日 1時) (レス) id: 617609c1ea (このIDを非表示/違反報告)
chiroru...(プロフ) - 続きめっちゃ気になります!切ない系なのがまた良いです!更新頑張って下さい、応援してます! (9月29日 17時) (レス) @page22 id: eb897bce76 (このIDを非表示/違反報告)
せつな - 掛け持ち失礼します…!どちらも頑張って更新しますのでよろしくお願いします。 (9月28日 22時) (レス) id: 617609c1ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:せつな | 作成日時:2023年9月28日 21時