34. 夏油side ページ34
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「気持ちいいかい?」
『う、んっ…』
今Aの支配権を握っているのが自分なのだ思うと、どうしようもなく興奮した。
「…どうされるのが好き?」
顔を手で覆ってしまったAの耳元で囁く。
しばらく間を開けてから、うしろからがいい、という消え入りそうな声が聞こえた。
思わず動きが止まってしまう。
『…すぐる?』
「ああ、すまない…何でもないよ」
急に動きを止めたからか、Aが顔を覆っていた手をどけて、不安そうな顔でこちらを見た。
『どうかしたの?』
なんでもないと伝えたが、Aの眉は不安そうにひそめられたままだった。
「いや、その…
昔はあんまり好きじゃなかったような気がして」
—— 当たり前だ。自分がAを10年も放っておいたのだ。
その間、何も無かった訳がない。こんな可愛い子を他の男が放っておく訳もない。
自分の招いた結果なのに、どうにも胸がモヤモヤとした。
私の顔を見て、Aが慌てる。
『あのね、ごめんね…傑の好きなようにしていいよ、だから』
「いや、いいんだ。
…ただちょっと、嫉妬してしまっただけで」
自分だって、この10年間ご無沙汰していた訳ではない。
時には目的、時にはその場限りの快楽のために、好きでもない女を抱いてきた。
『傑に嫌な思いしてほしくないの…
気になることがあったらいってほしい』
おねがい、なんて潤んだ目で見つめられて。
もう2度と捨てたりなんてしないのに、私のせいで一度深く傷ついた彼女は私の心が離れないようにと必死になっている。
その姿に歪んだ独占欲が頭をもたげた。
「私の可愛いAに手を出したのは誰かな。私の知っている人?」
わざと平静を装って、優しい笑みを浮かべて問いかける。
う、とAの目が泳いだ。
何でわかりやすい子なんだ、と今度は自然な笑みが溢れた。
「ふふ、当たりみたいだね。
私のAにそんなことを教えたのは誰かな。七海に、あの京都校のやつ…」
Aとある程度仲良くしていた男たちの顔を頭に思い浮かべていく。
「…自分で言えるかい?」
『あの、ね…』
続きを促したAの口から飛び出てきたのは、予想を遥かに越えた名前だった。
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せつな - chiroru...さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです。他作に比べ勢いで書いてしまっている節があり、読みづらいところがあるかもしれませんが、これからも読んでいただけると嬉しいです! (10月2日 1時) (レス) id: 617609c1ea (このIDを非表示/違反報告)
chiroru...(プロフ) - 続きめっちゃ気になります!切ない系なのがまた良いです!更新頑張って下さい、応援してます! (9月29日 17時) (レス) @page22 id: eb897bce76 (このIDを非表示/違反報告)
せつな - 掛け持ち失礼します…!どちらも頑張って更新しますのでよろしくお願いします。 (9月28日 22時) (レス) id: 617609c1ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:せつな | 作成日時:2023年9月28日 21時