一生に一度の願いを君に【五条悟】【夏油傑】

26. 夜蛾side ページ26

夜蛾side


傑がAの前に現れた、それなら納得がいく。


「内通していたのか？」


そう問いかけると、悟は力無く首を横に振った。


「…どうだろう、わからない。
　僕が知る限りではそんなことはないと思うけど」


実際Aが出ていくのに気が付かなかったんだから、本当のところがどうかは分からない

そう言って悟は自虐気味に笑った。


でも、と悟が続ける。


「自分を守るための希望的観測かもしれないけど…
　こっそりでも傑と連絡が取れてたなら、Aはもっと元気だったと思うんだ」

「…それもそうかもしれんな」


傑の離反から、Aは人が変わった。

悟にも言えることかもしれないが、あれだけ人懐っこくて無邪気だったAは大人(・・)になった。

表面上はにこやかに振る舞っていても心はどこか離れた所にあって、事務的に人生をこなしていたように思う。


「うん。流石に女優すぎる…と思う。
　それに、これも自意識過剰かもしれないけど

　僕に…ううん、少なくとも硝子に何も言わずに出ていくなんてことないと思うんだ。
　理由は嘘でもさよならを言ってくれると思う。
　それに任務を投げだすような不義理な子じゃない。
　術師を辞めて出ていく方がよっぽどAらしい」


この3日、硝子もAの行方を必死で探していた。

Aがこなす予定だった任務も山のように残されたままだ。


「俺もそう思う。となると…」


考えられる可能性は１つ。


「少なくともAの視点では、3日前、偶然傑と何らかのコンタクトを取ることになった。そして」

「……」


言いたくなさそうに、悟が言葉を絞り出した。
　

　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　


　

　
　
　
　

「…Aは、僕らよりも傑を選んだ」

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