一生に一度の願いを君に【五条悟】【夏油傑】

23. 夜蛾side ページ23

夜蛾side


Aが消えた。

最後に真希が高専から出ていくのをみかけたきりで、その先の残穢を辿ることができない。


「頼む悟、こちらも可能な限り全力で動く。
　…申し訳ないがお前まで任務を放棄するとなると回らないんだ。わかるだろ」


ダンッ、と悟が机を叩く。

目隠しを外したその整った顔は、焦りと怒りに歪んでいた。


「学長、Aが攫われたんだ！
　しかも丁寧に残穢まで消されて。
　人の残穢を消すなんて、そんなに簡単にできることじゃない。相手はきっとそれなりの術師だ。
　無事でいるかもわからない。そんな時に任務なんてやってられる訳がない」

「悟、頼む。落ち着いてくれ」


扉の隙間からこちらを伺う一年たちが見えた。

そんなわかりやすい気配にも気づかないほど、悟は動揺しているらしかった。

悟がさらに声を荒げる。


「目的は何？取引がしたいなら何で僕や高専に連絡が来ない？ねえ、Aはどこにいるの」

「悟」

「もう3日目だ！！！
　Aの無事を確認するまで任務なんてしない、絶対にだ」


そう言い切る悟に、伝えなくてはいけない現実があった。

—— いや、きっと、本人が一番初めに気が付いているはずだ。


「悟」


呼びかけると、悟が力無くこちらを見返した。


「…一番視えるお前が、この3日寝ずに探し回ったんだ。
　他の術師じゃ見つけられない」

「っ…」


考えたくもない、嫌な仮説が頭をもたげる。

　

　

　


　

　

　

　

　

「なあ、悟
　…Aは本当に攫われたのか？」

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