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16. 五条side ページ16

五条side


「A、これ」

『?』


職員室で何やらパソコンに向かうAに、任務地で買ってきた土産を渡す。


『わ。喜久福じゃん』


袋を覗き込んで嬉しそうに笑う彼女は、僕の恋人ではない。

隣の椅子に腰を下ろす。


『任務は大丈夫だった?怪我はしてない?』

「うん。ばっちりだよ」


文字通りの” 最強 ”になってから、自分を気遣ってくれるのはA1人だ。


『今1個食べちゃおうかな…
 悟は?食べる?』

「…たべる」


Aの問いかけに、早速誘惑に負けた。

毎度土産物だしと思って遠慮しようとして、勧められて自分で食べてしまうのだから滑稽なものだ。

んまぁ、と幸せそうに笑うAに顔が綻んだ。


「クリームついてる」

『ん』


きょとんとするAの口元のクリームを指先で取って、そのまま自分の口に運んだ。


『へへ、ありがと』


悟もついてるよ、とAが手を伸ばしてきて、口元がヒヤ、とした。


『ふ』


Aが堪えきれずに吹き出す。

ぺろ、と舌で舐めると、するのはほんのり苦いほうじ茶の味。


「……ねぇ今付けたでしょ」

『え?何言ってんの』

「僕ずんだだもん」

『あれぇ?』


クスクスと笑うAが可愛らしくて、思わず笑ってしまった。

2つ離れた席に座る七海が迷惑そうに咳払いする。


『なんだよ七海ィ。文句あんのか?』


おらおら、と面倒臭いモードに入ったAが七海の元まで椅子を滑らせる。


「うわ、来ないでください」

『いいのか?喜久福あげないぞ?』

「……いつもテキパキと仕事をこなしてらっしゃってとても尊敬しています」

『ほう、ではそなたにはこの金の喜久福を贈呈しよう』

「ありがとうございます」


さっさと買収された七海は、Aのお気に入りの後輩だ。

……僕らの関係を知る少ない人間でもある。


上機嫌になったAは、生徒にも配ってこよう、と職員室を出て行った。


「Aに買ってきたのに」


思わず口に出すと、いつものことでしょう、と七海が言った。


「……ちゃんと幸せにしてますか」


七海の唐突な問いかけに、土産の袋を畳む手を止める。


「…わかんない」


だからこうして小手先の小さな幸せを、日々彼女に届けていた。

それを知ってか知らずか、七海が言う。


「いつか向き合えるといいですね」

「分かった口聞いてんじゃないよ偉そうに」

「はい」


Aの座っていた椅子が、寂しく通路に残されていた。

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設定タグ:呪術廻戦 , 五条悟 , 夏油傑   
作品ジャンル:アニメ
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せつな - chiroru...さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです。他作に比べ勢いで書いてしまっている節があり、読みづらいところがあるかもしれませんが、これからも読んでいただけると嬉しいです! (10月2日 1時) (レス) id: 617609c1ea (このIDを非表示/違反報告)
chiroru...(プロフ) - 続きめっちゃ気になります!切ない系なのがまた良いです!更新頑張って下さい、応援してます! (9月29日 17時) (レス) @page22 id: eb897bce76 (このIDを非表示/違反報告)
せつな - 掛け持ち失礼します…!どちらも頑張って更新しますのでよろしくお願いします。 (9月28日 22時) (レス) id: 617609c1ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:せつな | 作成日時:2023年9月28日 21時

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