回想7 ページ9
この世を生き抜くために、剣はやはり欠かせないと思う。
三日ほど考えて、出た答えはそれだった。
剣のことを考えるたびに、『でも…』と、頭にはお兄様のあの形相がよぎる。
でも、それでも、私は強くなりたいんだ。
私は変わりたい。
『でも…問題は剣』
これについても考えた。
下男下女や侍女などに剣を頼めば、それはやがて父や兄の知るところとなるだろう。
幼い私より、当主や次当主を優先するはずだ。
仕える身なのだから、詮索されれば答えるだろう。
それではまた剣を取り上げられてしまう。
兄の部屋の管理も厳重にされてしまうだろう。
……お兄様の部屋にまた忍び込んでみるしかない。
『行こう…!』
再び、兄の部屋へ。
__
剣は以前あった場所から消えていた。
『隠された…?』
それなら、この部屋にはあるはず。
でも、お兄様の部屋は、几帳面な性格の現れといった様で、綺麗に整頓されている。
これを散らかして捜索したら、元に戻せるだろうか。
『……出直そう』
そう思って扉に耳を当てる。
いきなり扉を開けるより、こうして外の音を聞いてから出た方が、人と遭遇する可能性は減ると思った。
_扉にくっ付けた耳に飛び込んで来たのは、とても近い、いや…繋がったごく近い場所の、金具に触れる音だった。
扉が開く。
『あっ』
_入ってきたのは、お兄様だった。
『おっ…かえりなさい』
鉢合わせしたことに、またか、と一瞬思ってしまう。
が、此処はお兄様の部屋なので、お兄様がいるのは当然だ。
明らかにおかしいのは、私が此処にいる方。
「…剣ならもう此処には置いてない」
お兄様は、そう口を開いた。
『あ…はい…ごめんなさい』
不味い、バレバレだ。
それにしても、初めから置いていないのなら尚更、やはり無闇に漁らなくて良かったと息を吐く。
散らかして捜していたところに部屋に入って来られたら、もっと怒られたかもしれない。
「……この前はすまなかった」
『え?』
何故お兄様が謝っているのか?
「俺を支えたいが故に剣を手に取ったと聞いた」
『あっ…』
霊凰将軍が伝えたのか。
『ありがとうございます…お兄様…私…』
あれ?
なんで私泣いてるんだろう。
「……剣を持つ覚悟は本当にあるのか。今から逃げたい気はないか」
『…!ありません!!』
「……そうか」
呆れ半分、嬉しさ半分、憂い半分と言った表情で、お兄様は部屋の中へ歩き始めた。
あれ?怒られてない。
「入ってきていいぞ」
『…?』
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名無し46937号(プロフ) - 素敵な作品ですね。読んでてとても楽しいです!! (1月31日 23時) (レス) id: f091a3aa7a (このIDを非表示/違反報告)
お饅頭(プロフ) - いつまでも更新待ってますので!!安心して受験頑張ってください!応援してます!! (2023年4月26日 4時) (レス) @page38 id: c1e1b186de (このIDを非表示/違反報告)
ゆきもき - 続きをお待ちしております!!!!!大好きです!!!!!何卒無理せずお恵みくださいッッッ (2023年4月21日 22時) (レス) id: 73be847a92 (このIDを非表示/違反報告)
ぬるぬるさらさら - 返信ありがとうございます!10話の題名…「護」、お兄ちゃん護ってくれてるんだなって感じで好きです…あと6の「しゃらり」ってもしかして蒙恬のキャラソンから来てますか、?!!ありがとうございます!!! (2022年8月21日 21時) (レス) id: fac8821556 (このIDを非表示/違反報告)
にこつもみ_作者 - ぬるぬるさらさらさん» レスし忘れました💦 (2022年8月19日 22時) (レス) id: b558e55050 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にこつもみ | 作成日時:2022年8月7日 23時