対抗策 ページ36
『この度はお時間をいただきありがとうございます』
「いえ」
李牧殿は、武将だ。
呂不韋や蔡沢殿も怖いけれど、それとはやや違うものがある気がする。
秦国六大将軍が一人、王騎を殺した男。
『秦国の動向について、どうお受け止めになられましたか』
そんな男の目が、私の言葉によって少し見開かれた。
意外だ。
秦国に隣しここ百年余り衰えがちな魏国の者が、此度、同じく秦国に隣しながら栄える趙国で今の中華の注目の的である李牧殿を訪ねる訳なんて、"それ"しかなかろうに。
やはり舐められているのだろうか。
「……あれは秦国の意思表示。宣戦布告ですね」
李牧殿がこちらを見つめながら、確かめるように言う。
『ええ、私もそう思いました。魏国に対しての宣戦布告、そんな小さなものではありません。秦国があの地を取るとなると』
「…そこまでわかった方が、この中華に多くいるとは思えません。よくお気づきですね」
ああ、なるほど。この人は別に年齢とか性別とか、いやそれもあるかもしれないけれど、それで軽視していたというよりも。
『戦があるたびに、地図を書き換えているんです。それで気づきました』
自分の考えに自信があるというか…考えの賢さがわかっている人なのだろう。だから、そう多くが気付くものではないだろうと高を括っていた。
『それで、問題はそこから先です。秦国の宣戦布告を踏まえて、李牧殿のようなお方がそのまま何もせずというわけではないでしょう』
「勿論です」
『……』
目の奥に光るものを感じて、その標的ではないのに少し引き攣る自分を隠す。
こんなものの敵にはなりたくないなと思う。まあ、国が違うので敵なのだが。
「近いうちに楚国へ行くつもりなのですが、着いてきますか？」
『楚？』
超大国楚の力を借りるのだろうか。
「ええ。戦国四君が最後の一人、春申君を訪ねて」
『！？行きたいです！』
そんな人と対面する機会なんて、滅多にない。が、しかし。
ふと思う。
そんな人を訪ねるなんて、それはつまり。
『李牧殿…秦国を、どこまで潰すおつもりですか？』
「……どこまで潰すべきだと思いますか？最重要軍事拠点を取られた、魏国の民として」
『…………潰せるものなら……』
頭によぎるのは、秦国現国王、嬴政。
『根本から潰せたら良いのですけど』
「私もそう思います」
＿＿＿＿＿
春申君との対談、どっちの口が悪いかな対決になる未来しか見えなくて怖いです。by作者
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名無し46937号(プロフ) - 素敵な作品ですね。読んでてとても楽しいです！！ (1月31日 23時) (
レス) id: f091a3aa7a (このIDを非表示/違反報告)
お饅頭(プロフ) - いつまでも更新待ってますので！！安心して受験頑張ってください！応援してます！！ (2023年4月26日 4時) (レス) @page38 id: c1e1b186de (このIDを非表示/違反報告)
ゆきもき - 続きをお待ちしております！！！！！大好きです！！！！！何卒無理せずお恵みくださいｯｯｯ (2023年4月21日 22時) (レス) id: 73be847a92 (このIDを非表示/違反報告)
ぬるぬるさらさら - 返信ありがとうございます！10話の題名…｢護｣、お兄ちゃん護ってくれてるんだなって感じで好きです…あと6の｢しゃらり｣ってもしかして蒙恬のキャラソンから来てますか、？！！ありがとうございます！！！ (2022年8月21日 21時) (レス) id: fac8821556 (このIDを非表示/違反報告)
にこつもみ_作者 - ぬるぬるさらさらさん» レスし忘れました💦 (2022年8月19日 22時) (レス) id: b558e55050 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：にこつもみ | 作成日時：2022年8月7日 23時
