15 理想 ページ25
「呉Aと言ったな。呂不韋のどこが好かないのだ？」
布を被って廊下を渡っている時、ふと秦王が問うた。
滅相もないと断ったのに、何故か私は今、この人の隣を並んで歩いている。
『…嬴政様は彼がお好きですか』
嫌な質問だなぁと思いつつ、質問で返す。
人の好きなものを否定する趣味は無いので、念のための確認だ。
と、秦王は面食らったように目を見開いてから、すぐに顔を顰めた。
「…考えたこともなかったな。いや、全く。そもそも奴は反対勢力であるし、本心を開いてくれた事は無いだろうからな」
故に好き嫌いがよく解るほど、全てを知らん。
そう呟く秦王を片目に、まあ好みはしないだろうなぁと頷く。敵勢力という以前に。
この王は趙国に人質となっていた幼少期を持つ。
それも呂不韋その人の仕業だからだ。
『…そうですね。私の場合、目が好きませんでした』
「目？」
『ええ』
黒く相手を映すあの瞳。
顔を覗き込み続きを促すこの人からは、そんな面影は全くない。
『人を、物のように品定めする。あの目が』
独りよがりで己の先入観を基に、人を格付けする。
人間は自己以外に出られないものであるが、それでも。
「…確かに、そういう目で見られるのは嫌だな」
『ええ。それ以前に、あの方は御相手がいらっしゃいますからね』
「…厭戦家なのか？」
『いいえ』
売られた喧嘩は買う主義だし、目的の為なら多少の戦闘は仕方ないと思っている。
ならば…と訊く秦王に、畏れ多くも頷く。
『だって、それで振り向かれたら、その男は浮気をする男だと言うことですよ』
不貞だとか、浮気だとか。
そういうことは女にばかり言われる。
恐妻家などはごく少数で、余程几帳面な愛妻家でなくては一人の男に女は幾人もいるものだ。
「…確かに、嫌だな。しかし、二つとも」
『高望みですね』
一人の男に対し女は多いのは、より子孫を残すために仕方ない。
人を格付けするのだって、より良い物を選ぶ力だ。
戦力だ。
戦の絶えぬこの世で、選別の目を持たない者を探す方が難しい。
一人の妻だけを持ち愛す者の方がずっと少数だ。
でも。
『理想は高くてなんぼ、そう思いますので』
理想から低くては、現実はもっと下がる。
未来を信じているのか、未来に甘えているのか。
その刻が来るまで当事者達にはわからないけれど、願ってなんぼ、祈ってなんぼ。
最初から諦めていては何も生まれないのだ。
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名無し46937号(プロフ) - 素敵な作品ですね。読んでてとても楽しいです！！ (1月31日 23時) (
レス) id: f091a3aa7a (このIDを非表示/違反報告)
お饅頭(プロフ) - いつまでも更新待ってますので！！安心して受験頑張ってください！応援してます！！ (2023年4月26日 4時) (レス) @page38 id: c1e1b186de (このIDを非表示/違反報告)
ゆきもき - 続きをお待ちしております！！！！！大好きです！！！！！何卒無理せずお恵みくださいｯｯｯ (2023年4月21日 22時) (レス) id: 73be847a92 (このIDを非表示/違反報告)
ぬるぬるさらさら - 返信ありがとうございます！10話の題名…｢護｣、お兄ちゃん護ってくれてるんだなって感じで好きです…あと6の｢しゃらり｣ってもしかして蒙恬のキャラソンから来てますか、？！！ありがとうございます！！！ (2022年8月21日 21時) (レス) id: fac8821556 (このIDを非表示/違反報告)
にこつもみ_作者 - ぬるぬるさらさらさん» レスし忘れました💦 (2022年8月19日 22時) (レス) id: b558e55050 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：にこつもみ | 作成日時：2022年8月7日 23時
