5 祈り ページ15
体力も男ほどは無くて、力もないので、一撃を確実に急所に打ち込まなければならない。
集中して、一気に撃とう。
大事なのは速度。動きを悟られないように。
間合いを詰めて、
今…!
「ざんねん」
『っ』
突き付けたはずの剣は、しっかりと寸前で受け止められていた。
「読みは良いね、がむしゃらじゃなくて、正しい」
『でも塞がれました。無理に褒めなくて良いですよ』
当たらないのは当てようとしないのと同じだ。
「普通に感心してるんだから素直に受け取って。足りないのは、速さだね。瞬発力。それと強い力だ」
素直じゃないつもりはなかった。
…そんなに私は捻くれているだろうか。
若干の自覚はあるが、さっきのは本当の事だ。
『強い力などというのは鼻から諦めていますが…そうですね、瞬発力』
重点的に特訓しなくては。
自分の身は自分で守りたい。
そう思いながら、ふと空を見やる。
もうすぐ出発の時間だ。
『ありがとうございました』
「嗚呼。……うーん、戦じゃないのにこれで合ってるかわからないけど…まあ、外交も外交官にとっては戦かな」
そう言いながら、輪虎殿が自分の両手を胸前に掲げる。
「…武運を祈るよ」
『…ありがたく。こちらこそ、ご武運を』
同じように拱手で返す。
これからは彼は魏の武将として戦に出るのだ。
そう思うと心強い。
「あ」
去り際、思い出したように輪虎殿が口を開いた。
「そういえば名前聞いてなかった。君は一方的に僕が輪虎だって知ってるのに」
『一外交官の端名ですから。しかしそれでは不平等でしたね』
_呉家に恥じぬ私になれればいい_
今の私は、果たしてそうであろうか…
『呉Aと申します。以後お見知り置きを』
「呉Aちゃん…失礼だけど、呉慶さんとこの娘さんだったりする?」
『よく分かりましたね』
「あんまり似てないね」
『母親似ですから』
そして兄似でもある。
「名家の重圧なんて僕は知らないけど…あまり気を詰めすぎないで頑張ってね」
『…はい』
私に声をかけてくださる方は皆同じように言う。
気を張りすぎるなと、息を詰めすぎるなと。
そんなにも自己管理が出来なさそうに見えるのだろうかと苦笑する。
「じゃあ、またね、Aちゃん」
『あ、はい…!また…!』
また、会おう。
戦乱の世のこの言葉は、祈りにも似ている。
しかし本当に、会えたら良いなと思った。
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名無し46937号(プロフ) - 素敵な作品ですね。読んでてとても楽しいです!! (1月31日 23時) (レス) id: f091a3aa7a (このIDを非表示/違反報告)
お饅頭(プロフ) - いつまでも更新待ってますので!!安心して受験頑張ってください!応援してます!! (2023年4月26日 4時) (レス) @page38 id: c1e1b186de (このIDを非表示/違反報告)
ゆきもき - 続きをお待ちしております!!!!!大好きです!!!!!何卒無理せずお恵みくださいッッッ (2023年4月21日 22時) (レス) id: 73be847a92 (このIDを非表示/違反報告)
ぬるぬるさらさら - 返信ありがとうございます!10話の題名…「護」、お兄ちゃん護ってくれてるんだなって感じで好きです…あと6の「しゃらり」ってもしかして蒙恬のキャラソンから来てますか、?!!ありがとうございます!!! (2022年8月21日 21時) (レス) id: fac8821556 (このIDを非表示/違反報告)
にこつもみ_作者 - ぬるぬるさらさらさん» レスし忘れました💦 (2022年8月19日 22時) (レス) id: b558e55050 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にこつもみ | 作成日時:2022年8月7日 23時