3話 ページ3
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大粒の雨が五月蝿くて。
でも、私と君との間は妙に静寂で。
落ち着きの無くなるようなこの感覚はきっと君は知らない。
一分、一秒ものこの間。
君は何を想っているのだろう。
─────･･････
「雨、止みそうにないね。」
ぼんやりと呟いてみれば、瞬く間に雨の音に飲み込まれていく。
「すまん、なにか言ったか？」
頭上からの視線が感じ、上に顔を向ければ此方を向く君の瞳と絡まる。
高鳴る心臓の音は、雨に掻き消され君に伝わっていない、筈。
「なんでもない。」
俯く重い頭。
このままずっと、二人きりで居れたらいいのに、って。
雨なんか止まなくていいのに、なんて。
制服であるプリーツスカートの裾を握り、君に聞こえないくらいの溜息をひとつ。
そんな時、君が口を開いた。
「A。･･････走れるか？」
君の声は相変わらず力強くて、五月蝿い雨に負けないくらい私の耳に入ってくる。
まさか、とは思ったが、耳を疑う事はなかった。ただ、目は疑った。
肩から下げていたエナメル質の部活用バッグとやらを背へ回す君。
きっと君は正気だ。
「本当に走って帰るの？」
第一、こんな大雨だ。
制服や靴が濡れてしまう。明日も学校が通常であると言うのに。
なんてのは私の言い訳という名の、”まだ君と一緒に居たい” という口実である。
「当たり前だ。」
親指を立て、歯を見せて笑う君の笑顔が眩しくて、無理だなんて言える訳も無く。
私は小さく頷き、”走れる” と呟いた。
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作者名：充電アダプタ | 作成日時：2021年6月1日 19時
