10話 ページ10
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ーAside
”二口堅治”
そんな固有名詞が会話に出てくる度、心臓が跳ね上がるのは今日で何回目だろうか。
意図せず君を視界に入れてしまうのは何故だろうか。
君と目が合う度、視界が鮮明に彩るのは私だけなのだろうか─────。
─────･･････
凍えるような冬の寒さはいつの間にか去っていて、暖かい風が肌を擽る。
と共に、下ろしていた髪が乱れ少し厄介。
不意打ち耳に髪を掛け、今日もまた男子の噂話が始まりを告げた。
─────だが、いつものように友人の話に感情移入が出来ないでいた。
話を伺えば、此方まで胸が高鳴ってその都度羨ましいと頬が火照るのに。
皐月。初夏に入るなり、君に想いを伝えられてから片時も離れない君の声と表情。
あぁ、だめだ。
今も視界の片隅に君を入れてしまっている。
友人であろう男子に絡まれている君の耳は桃色に染まっていて、
君は誰を考えているのか、なんて気になってしまう程だ。
烏滸がましいなんて承知の上で、肯定感が高いのも知っている。
─────そんな浮かれている私を見た神様が腹を立てたのかは知らないが。
「好きじゃねぇよ。」
聞き慣れた君の声。
─────気の所為？
いいや、そんな筈は。
”好きじゃない”
なんて自分の事だと決定的証拠なんてないけれど、被害妄想の過ぎる私に苛苛する。
あれだけ沢山に想いを伝えてくれたのが嬉しくて嬉しくて、舞い上がり過ぎていた自分も悪いだろうに。
相手はモテてると噂を立てる程の男子だ。
─────悲しさ、辛さなんて知らない。
恥ずかしさでいっぱいで今にも零れてしまいそう。
私は到底君と釣り合わない、なんて分かっていたのに舞い上がって馬鹿みたいだ。
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作者名：充電アダプタ | 作成日時：2021年5月9日 12時
